P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-24
もちろん事業を際立たせている知識が、純粋に技術である場合もある。
例えば、アルコール飲料のリーダー的なメーカーの一つであるナショナル・
ディスティラーズ社は、自らの知識を発酵化学と定義している。
そして事実、この定義から第二次世界大戦後間なく化学医薬品の大手メー
カーにまで発展した。
ともあれ、ここまで技術ではなく知識について述べてきた。
技術は数ある知識の一つにすぎないからである。
いかなる企業においても、技術だけが唯一の必要な知識ではない。
高度に技術的な産業において、特に技術的には優れていないにもかかわ
らず成功している企業がたくさんある。もちろんそれらの企業も優れた
技術はもっていなければならない。しかし本当の強みは、ほかの分野、
例えばアメリカのある化学品メーカーのようにマーケティングであったりする。
事業はガラスであると定義しているガラスメーカーが成功するには、
いかに複雑で難しくとも、ガラスの技術そのものは知らなければならない。
ガラスおよびガラス状のあらゆるものに関して、工業上、商業上の応用に
ついて知識をもたなければならない。一方でガラスメーカーは、ガラス
製造についての知識とともに、最終用途についての知識ももたなければ
ならない。
このことは、常にあらゆる素材産業についていえる。あらゆる産業の中で、
素材産業は、技術という観点から、すなわち教え学ぶことのできる体系的な
情報という観点から最も定義しやすい産業である。
この続きは、次回に。