お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-63

アメリカのデパートの多くは、初めのうちディスカウント店を不健全な

ものとして攻撃した。しかし戦いに勝てないことが明らかになるや、自ら

次々にディスカウント店を開いた。しかし結果はそのほとんどがお粗末

だった。

ある大手のデパートチェーンだけは、全く違う路線をとった。

ディスカウント店をもとうとはしなかった。逆に高級化した。

あらゆる都市の店を大衆のための高級店に変えた。

高級品特にデザイン志向でありながら保守的な衣料品に力を入れた。

このデパートチェーンの役員は、「スージーちゃんのパジャマは、お近くの

ディスカウント店で買っていただく。そうすればスージーちゃんの初めての

ダンスパーティー用のドレスに当店で使っていただける金額も大きくなる」と

いっている。

 さらにまた、何年もの間、プラスチックの脅威を嘆くばかりだったある

大手のある製紙メーカーの例がある。このメーカーはついにプラスチックを

機会としてみることにした。その結果、新しい流れを利用するために

包装材料と容器の生産のための子会社を設立した。

その子会社はプラスチックを大いに利用した。いまや包装材料と容器の

業界における大手である。親会社はプラスチックへの流れを脅威とする

どころか大きな機会として利益をあげた。

 したがって、常に「事業にとって有害であるとしてきたものをいかに

受け入れるか。そもそもそれらは本当に有害か。

それとも逆に役に立てられるか」を問わなければならない。

 この問いによって、アメリカのある大手清涼飲料メーカーは市場を新しい

目で見ることができるようになった。そのメーカーは、長年の間低カロリー

飲料は流行にすぎないと主張していた。しかし実際には、マネジメントは、

特別の製法や秘密の原料に基づいていないその種の飲料が、自社のかなり

高カロリーのブランド製品にとって大きな脅威であると感じていた。

ところが、ボトラーたちが低カロリー飲料をより多く扱うようになるにつれ、

同社の清涼飲料もますます売れるようになっていった。

すなわち低カロリーのダイエット飲料は、市場を侵食するのではなく、

昔からの清涼飲料のための市場をつくり出してくれていた。

この事実をマネジメントが受け入れるには数年を要した。

しかし今日では、このメーカー自身が低カロリー飲料を生産し、販促し、

販売している。

そして昔からの製品も新しい製品もともに売上げを伸ばしている。

 

この続きは、次回に。

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