P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-103
今日、組織に働く知識労働者は、三つのコミットメントを果たさな
ければならなくなっている。
● 自らの知識と努力をして経済的な成果に貢献させるコミットメント。
知識労働者たる者は、仕事や技能ではなく貢献に焦点を合わせ
なければならない。
● 集中するコミットメント。知識労働者たる者は、企業の経営幹部と
して、自らの管理下にある唯一最大の資源、すなわち自分自身を
機会と成果に割り当てる責任を果たさなければならない。
● 自らの職務と仕事、および企業全体としての経済的課題を、体系的、
目的的、組織的に遂行するコミットメント。
今日、マネージャーの社会的責任が強調されている。
企業に働く知識労働者はいまや産業社会におけるリーダー的な階層で
ある。そしてリーダー的な階層には自らの当面の課題や領域を超えた
責任がある。
特に今日、マネジメントの最大の社会的責任は、一般人、すなわち企業の
外にあって企業について何も知らない教育ある人たちが、企業は何を
行い、何を行うことができ、何を行うべきであるかを理解できるように
することである。
今日、企業に対する敵意と見られるものの多くは、実は研究もされて
いなければ説明もされていない企業活動に対する自由業、公務員、
学者など、教育ある素人の困惑から生じたものであるにすぎない。
例えば、インドのネールとその同時代人が社会主義者になったのも、
その遠因は、彼らの知的教師たる一九○○年代初頭のイギリスのフェビ
アン主義者たちが、当時の企業を見たときに感じた軽蔑感、すなわち
人間的な心さえ捨てれば誰でも勝てるという博打的な事実に対する
軽蔑感にあった。
いかなるものであれ、人の活動というものは、それが体系的かつ組織的な
目的意識を持つ活動であることを示しえないかぎり、すなわち一つの
普遍的な体系として示しえないかぎり、部外者の目にはそのように
見えるものである。
● コミットメント
コミットメント(commitment)とは、英語由来の言葉であり、「委託、
関与」「公約、約束、言質」「責任」「参加」などを意味する言葉です。
つまり、責任をもって自分が関わっていくこと、責任をもってある事象や
物事に関わっていくことを公約・明言すること、責任を伴う約束をする
ことを指す言葉です。
● 遠因(えんいん)
ある結果を導いた原因として、直接ではないが、何らかのかかわりを
もつ事柄。遠い原因。間接の原因。⇔近因。
この続きは、次回に。