『成しとげる力』③
私も経営をするうえで、一番をめざすという姿勢を崩さずにきた。
製品の品質と精度はもとより、シェアもまた一位をめざして努力を
重ねる。そのためには、マーケティング力も人材も、つねに一番を
めざさなければならない—–。
「二番でもいい」などと考えていたら、あっというまに三番以下に
なりさがってしまう、厳しい世界である。
現代社会においては、まさに「一番以外はビリ」なのである。
○ 真似だけでは人を超えることはできない
一番をめざすための第一歩は、その分野のトップランナーを詳細に
研究し、真似ることである。「人の真似はいイヤだ」とメンツに
こだわり、一から始めたのでは、膨大な時間がかかり、急速に進歩を
とげる技術革新の時代に生き残ることはできない。
しかし、真似るだけでは「同等以下」にしかなれない。
そこに独自の強みを注入することで初めて、世界一の地位を得ることが
できるのである。
モータ開発を例にとるならば、まずは市場でトップシェアにある他社
製品のモータを入手する。次に、そのモータを分解して、どの性能が
優れているのか、顧客が魅力に感じている点はどこなのかを徹底的に
分析する。実際に真似て作ってみて、技術的な難易度を体感することも
重要である。そのうえでもてる最先端のアイデアや技術を加えることで
イノベーションを追求し、一気に抜き去るのだ。
他人がやっていることを、そのまま真似るだけでは絶対に勝てない。
新たな価値を付加しなければ、一番になれないのだ。
海外進出についても同様のことがいえる。すでにたくさんの企業が進出
している場所に進出しても、二番手、三番手以下にしかならない。
新しい土地に誰よりも早く乗り込むことができないと、一番にはなり
えないのだ。
どんなことでもそうだが、変化のスピードはどんどん速くなっている。
人の後ろからついていっても成功はおぼつかない。
丹念な調査を地道に継続する一方で、独自性を打ち出し、リスクを
とって一番で参入する。それができるか否かが、成長発展の鍵を握って
いるのだ。
この続きは、次回に。