『成しとげる力』⑳
○ 学生時代の塾経営と株取引で学んだこと
○ ケチではダメ、めざすべきは「始末屋」
幼い頃、母親からよく「ケチではなく始末屋になりなさい」といわれた
ものだ。「始末屋」とは京都でよく使われる言葉で、いらないところ
ではお金は使わないが、必要な場面では惜しまずにお金を使う人のことを
いうほめ言葉なのだ。つまり、金額の問題ではない。
ムダなお金は一円も出さないが、必要なら百万円でも出すという意味だ。
当社は日頃からムダなお金を使わないように徹底しているので、華や
かな京都の街では「ケチな会社」と陰口を叩かれることもある。
しかし、いついかなるときに危機がやってくるかはわからない。
そのときに国は助けてくれない。銀行も手を貸してくれない。
会社は自らの手で守るしか手立てはない。だから有事に備えて始末に
徹し、ムダなお金を使わないことが大切なのだ。
第5章 人を育てよ!時代は大きく変わる
○ 型やぶりの入社試験がなぜ功を奏したのか
リーダーシップを発揮して、人をぐいぐい引っ張っていく人は声が
大きいことが多い。相手の目を見て、自信に満ちた声ではっきりと
話す。これに対して、声が小さい人は覇気が感じられず、頼りない
傾向にある。
出勤時間が遅い人は、何事につけても仕事がルーズでミスも多くなり
がちだ。逆に早く出勤する人には心にゆとりが生まれる。
このゆとりが仕事の成否に大きく影響するのだ。将棋や囲碁の世界でも
先手必勝というし、相撲でも立ち合いで勝負が決まる。
先んずれば人を制す。ビジネスの世界も同じである。
三つ目の食事の早さはどうか。これも一流の人間になるための条件と
いえる。何よりも早飯の人は仕事も早い傾向がある。競争社会を生き
抜くためには、物事を早く処理できるということが重要なポイントだ。
さらに、食事が早いということは健康な証拠でもある。
胃腸が丈夫でなければ早飯には耐えられない。いくら頭がよくても、
しょっちゅう病気で休まれては戦力にならない。
○ 成功の条件は「頭のよさ」以外のところにある
以前のことだが、さまざまな業界で大きな成果を挙げている経営者十五人
と、立て続けにそれぞれ一対一で食事をする機会があった。
それによってあらためて、これまでの考えが間違っていなかったことを
確認したのである。
十五人に共通していたのは、人一倍働くことを苦にしない。
そして個性が強く、どちらかというと奇人・変人タイプ。
そのうえ人が大好きで、時間があれば人と会っている、という三点
だった。
そして、いずれの人も食べるのが早く、残さずに全部平らげていた。
つまり、早飯なのだ。やはり早飯は成功の条件に違いないと、意を強く
したのである。
この十五人の経営者の特徴をみてもわかるように、実社会で成果を
挙げていく人の条件は、いわゆる世間で言われるような頭のよさだけ
ではない。
私のこれまでの経験からしても、またこれまで入社した社員たちの
データをとってみても、仕事の優秀さは、卒業した学校のブランドや、
そこまでの成績ともまったくといっていいほど相関関係がなかった。
この続きは、次回に。