「アメリカはなぜ日本より豊かなのか?」⑤
第3章では、円安で日本が衰退したことを見る。円安になると、日本円に換算した売上
額は増加する。原材料価格の上昇分は売上げに転嫁されるため、企業の利益が増加する。
このため株価が上がり、歓迎される。しかし、日本企業は、円安による利益増に安住して、
技術開発の努力を怠った。
日本の経済が停滞する基本的な原因は、デジタル化を実現できないことだ。
これは、日本社会の基本的な構造に起因する現象だ。
第3章 円安に安住して衰退した日本
1. 異常な円安が進み、日本人が貧しくなった
□ 2021年から、急激な円安が進行
□ 日本人が貧しくなった
□ 「円安の是非」などと論じるのはおかしい
2. 円安になれば企業の利益が増える
□ 円安になれば自動的に利益が増える
□ 円安は「麻薬」。技術開発という「手術」を怠った
3. 異常な円安(1):日本円だけがコロナ前の水準に戻れない
□ 2022年10月までの第一局面:ドル高
□ ユーロやポンドは、2021、22年の急激な減価から回復
□ 日銀の金融緩和維持スタンスが、歴史的円安を招いている
4. 異常な円安(2):購買力平価に比べて、円安すぎる
□ 実質実効為替レートで見た円の購買力は、1990年頃の半分に低下
□ ビッグマックによる比較では1ドル=79円が適切なレート
□ OECDとIMFが計算する購買力平価は1ドル=90円程度
□ 現状の市場レートは購買力平価より大幅に円安
□ 金融正常化:長期金利を市場に委ねることが必要
□ 円安は、日本を弱くする
◆ 第3章 まとめ
1. 2022年から急激な円安が進んだ。アメリカが金利を引き上げ、日本は引き上げなか
ったためだ。日本人は大幅に貧しくなった。「円安の是非」などを問題にするのは、
おかしい。
2. 円安になると、日本円に換算した売上額は増加する。原材料価格の上昇分は販売価
格に転嫁されるため、企業の利益が増加する。このため株価が上がり、政治的に
歓迎される。
3 . ユーロやポンドの減価は2022年9月で止まり、為替レートはコロナ以前の水準に戻った。
しかし、円はコロナ前より大幅に減価したままだ。これは、日銀が、金融正常化宣言を
したにもかかわらず、金融緩和を継続するとしているためだ。
4 . 2024年の購買力平価は1ドル=90円程度なので、市場レート150円は、これより大幅
に円安だ。両社の差がこれほど開いたのは、1980年代前半以来のことだ。
円安が日本経済に与える弊害を直視し、長期金利を市場の実勢に委ねる必要がある。
この続きは、次回に。
2025年4月20日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美