チェンジ・リーダーの条件⑰
2章「道具としての情報」を使いこなす
○ 企業のコンセプトが変わった
歴史が教えるように、道具とコンセプトはたがいに影響し合い、依存し合う。
たがいに地方を返る。これが今日、コンピュータという道具と、企業についてのコンセプトの間で起こっていることである。すでに、コンピュータという新しい道具によって、企業についてのコンセプトは次のようにとらえることが可能となり、かつ必然となった。
第一に、企業とは資源の加工者である。コストを成果に転換する機関である。
第二に、企業とは経済連鎖の環である。コストを管理するには経済連鎖全体を把握しなければならない。
第三に、企業とは富を創出する機関である。
第四に、企業とは物的環境によってつくられる被創造物である。
と同時に、物的環境をつくる創造的主体である。
○ 原価計算から成果管理へ
すでに伝統的な原価計算から、活動に焦点を合わせた新しいコスト管理として、アクティビティ・ベース・コスティング(ABC会計)に移行している企業も多い。
新しいコスト管理では、事業、特に製造に関わる全プロセスというコンセプトが重視される。
評価測定の方法も、伝統的な原価計算とは異なる。
新しいコスト管理は、原材料や資材や部品が工場に到着したところから、製品が最終消費者の手元に達するまでの全プロセスを問題とする。
製品の据え付けやアフターサービスなど、たとえ消費者が別途負担することになるコストも、全プロセスのコストの一部としてとらえる。
新しいコスト管理は、機会の遊休時間や、材料や工具の待ち時間、出荷の待ち時間、不良品の手直しや廃棄など、何かを行わなかったことに伴うコストも計算する。
新しいコスト管理は、伝統的な原価計算よりもコストの管理に優れているだけではなく、成果の管理を可能にする。
伝統的な原価計算は、たとえば、熱処理のような作業は、当然行うものとし、しかも現在行っている場所において行うべきものとする。
これに対し、新しいコスト管理は、そもそもそのような作業を行う必要があるかを問題にする。
行う必要があるとしても、次に、それまで当然のこととして行ってきた場所で行う必要があるかを問題にする。つまり、新しいコスト管理は、価値分析(VA)、プロセス分析、品質管理、原価計算など、これまでそれぞれ独立した分析手法として使っていたものを統合する。
そのようにして、新しいコスト管理は製造コストを大幅に引き下げる。
三分の一以上引き下げることがある。
一定期間の総コストが固定しており、かつ資源間の代替が不可能であるという事実こそ、事業の全プロセスをトータルなものとしてとらえ、コスト管理しなけばならない理由である。
新しいコスト管理は、この現実を前提とする。従って、新しいコスト管理の導入によって、われわれは初めて、サービス業においても、コストに関わる情報を手に入れ、成果を管理することができるようになる。
○ 経済連鎖全体のコストを管理する
自社のコストについての情報を得るだけでは不十分である。
ますます激化するグローバル市場で競争に勝つには、経済活動の連鎖全体についてコストを把握し、その連鎖を構成する他の企業との連携のもとに、コストを管理し、成果を最大化しなければならない。
したがって今日では、すでに多くの企業が、自社だけのコスト管理から、経済連鎖全体のコスト管理へと重点を移している。
経済連鎖においては、最大の企業さえ環の一つであるにすぎない。
法的に独立した存在としての企業は、株主や債権者、従業員や税務当局にとっては現実の存在である。
しかしそれは、経済的には擬制にすぎない。
○ 価格主導のコスト管理が不可欠
今後、経済連鎖としてのコスト管理はますます不可欠となる。
それどころか、コスト管理だけでなく、企業戦略や製品企画をはじめとするあらゆる活動について、企業の法的枠組みを超え、事業のプロセス全体を把握し、管理することが必要になっている。しかも、経済連鎖全体のコストを管理するということは、コスト主導の価格決定から価格主導のコスト管理に移行することを意味する。
シアーズ・ローバックやマークス・アンド・スペンサーだけは、はるかむかしから価格主導のコスト管理を行っていた。
顧客が進んで払う価格を設定し、商品の設計段階から、許容されるコストを明らかにした。
もちろん価格主導のコスト管理を行うには、経済連鎖のコスト全体について情報を把握し、管理することができなければならない。
この経済連鎖の考え方は、外部委託、提携、合弁など、支配被支配ではなくパートナーシップを基盤とする事業関係に現れる。
それらの事業関係が、特にこれからのグローバル経済では、親会社と子会社という伝統的なモデルに代わって成長のモデルとなる。
いかなる障害があるにせよ、経済連鎖によるコスト管理を行わなければならない。さもなければ、いかに社内で生産性の向上を図ろうとも、競争力を喪失していく。
この続きは、次回に。