チェンジ・リーダーの条件⑳
○ 情報を一つのシステムに統合する
新しいものは、技術的なデータ処理の能力の向上だけである。
この能力の向上のおかげで、ついこの間まで膨大な労力と費用をかけなければならなかったことを、迅速にかつ安く行うことができるようになった。
今日、コンピュータによって、それなしでは不可能であったに違いないABC会計が可能となった。
重要なことは、道具に関わることではない。
道具の背後にあるコンセプトに関わることである。
新しいコンセプトが、かつては別々の目的のために個別に使われていた諸々の手法を、一つの情報システムに統合しようとしている。
そのようなシステムだけが、企業の診断、企業の戦略、事業上の意思決定を可能とする。
これこそまさに、情報の意味と目的に関わる革新的な変化である。
それは、すでに過去となったものの記録や事後処理のための情報から、未来の活動のための情報への進化である。
今日出現しつつある組織は、骨格、システム、間接としての情報を中心として設計される。
われわれはこれまで、手の込んだ数学的な手法を使おうが、難解な社会的な専門用語を使おうが、企業というものは、安く買って高く売るものでと考えてきた。
しかし、これからの新しいアプローチにおいては、企業は、価値を付加し、富を創出するものとしてとらえなければならない。
第3章 目標と自己管理によるマネジメント
○ 何に焦点を合わせるか
組織はチームをつくりあげ、一人ひとりの人間の働きを一つにまとめて共同の働きとする。
組織に働く者は、共通の目標のために貢献する。
彼らの働きは同じ方向に向けられ、その貢献は、隙間なく、摩擦なく、重複なく、一つの全体を生み出すよう統合される。
事業が成果をあげるには、一つひとつの仕事を、事業全体の目標に向けなければならない。
仕事は、全体の成功に焦点を合わなければならない。
期待される成果は、事業の目標に基づいて決められる。
それは、組織の成功に対する貢献によって評価される。
組織に働くものは、事業の目標が自らの仕事に対し求めているものを知り、理解しなければならない。
そして、それに基づいて彼らを評価しなければならない。
○ 方向づけを間違えるおそれ
マネジメントの階層的な構造が、危険を大きなものにする。
上司が言ったり行ったりすること、何気ない言葉、習慣、あるいは癖まで、部下にとっては、計算され意図された意味あるものと映る。
組織に働く者の意識を、それぞれの上司にではなく、仕事が要求するものに向けさせることが必要である。
経営書の多くが説いているように行動パターンや姿勢を強調しても、解決は得られない。
逆に、人間関係に意識過剰となって、問題を大きくしてしまうおそれがある。
○ 何を目標とすべきか
社長から工場の現場管理者や事務主任にいたる全員が、明確な目標をもつ必要がある。
それらの目標は、自らの部門が生み出すべき成果を明らかにしなければならない。
他の部門の目標達成を助けるために、自らや自らの部門が期待されている貢献を明らかにしなければならない。
そして、自らの目標を達成するうえで、他の部門からいかなる貢献を期待できるかを明らかにしなければならない。
言いかえるならば、最初の段階から、チームワークとチームの成果を重視しなければならない。
もちろん、そのような目標は、企業全体の目標から導かれなければならない。
ある企業では、会社全体の目標と生産部門全体の目標の詳細を、現場の小さな一部門にいたるまで示すことによって、成果をあげている。
目標は、事業の繁栄と存続に関わりのあるあらゆる領域について、その果たすべき貢献を明らかにしなければならない。
もちろん一人ひとりの目標は、長期と短期の観点から明らかにすることが必要である。
そして目標は、事業上の定量化できる目標とともに、人材開発、働く人たちの仕事ぶりや姿勢、社会的責任など、定量化できない目標を含むことが必要である。
これらの条件を満たさない目標は、近視眼的であって、意味がない。
この続きは、次回に。