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チェンジ・リーダーの条件-31

4章   起業家がとるべき戦略

○ 四つの戦略

起業家精神を発揮するには、起業家マネジメント、すなわち組織の内部に関わるいくつかの原理と方法が必要である。

これに加えて組織の外部、すなわち市場に関わるいくつかの原理と方法が必要である。それが起業家戦略である。

起業家戦略には四つある。

総力戦略、ゲリラ戦略、ニッチ戦略、顧客創造戦略である。

これら四つの戦略は、いずれか一つを選べというものではない。

そのうちの二つを組み合わせ、時には三つを組み合わせて一つの戦略とすることができる。

これら四つの戦略には、それぞれ特徴がある。

合致するイノベーションと合致しないイノベーションがある。

それぞれが、起業家に対し明確な行動を要求する。

それぞれに限界があり、リスクがある。

 

○ 総力戦略—市場の支配を目指す

この戦略は、最高の起業家戦略とされているものである。

この戦略をとるのが、世界最大の医薬品メーカー、スイスのバーゼルにあるホフマン・ラロッシュ、デュポン、3M。

この戦略はリスクが大きい。

ほかの戦略がとられるのは、この戦略では成功よりも失敗のリスクのほうが大きいからである。

強い意志がなければ失敗する。努力が十分でなければ失敗する。

イノベーションとしては成功しても、十分な資源を投入しなければ失敗する。事業として成功しても、追加資源を投入しなければ失敗に終わる。

多くの場合は、ほかの戦略をとるべきである。

ほかの戦略のほうが望ましい。それは、リスクの問題ではない。

必要なコスト、努力、資源に見合うほど大きなイノベーションの機会があまりないからである。

 

○ 創造的模倣戦略—-ゲリラ戦略①

ゲリラ戦略、すなわち「弱点を突く攻撃」。

起業家のための戦略としては、創造的模倣戦略と柔道戦略の二つが、これに該当する。この戦略は模倣である。

起業家は、すでに誰かが行ったことをいう。しかし、最初にイノベーションを行った者よりも、そのイノベーションの意味をより深く理解するがゆえに、より創造的である。

この戦略をもっとも多く使い、大きな成果をあげてきたのはIBMである。

あるいは、世界の時計市場においてトップの地位を得た日本のセイコーである。

誰かが新しいものを完成間近までつくりあげるのを待つ。

そこで、仕事にかかる。短期間で、顧客が望み、満足し、代価を払ってくれるものに仕上げる。ただちに標準となり、市場を奪う。

創造的模倣戦略は、他人の成功を利用する。

それは、一般に理解されているような意味でのイノベーションではない。

製品やサービスを発明しない。

 

この続きは、次回に。

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