お問い合せ

完訳 7つの習慣-人格の回復-10

成長と変化の原則

 

社会心理学者エーリッヒ・フロムは、個性主義の因果を鋭く指摘している。 

今の時代の人々を見ると、まるでロボットかと思える。

自分自身を知らず、理解しようともせず、唯一わかっているのは自分が社会から求めているイメージだけである。

意思の疎通をはかるコミュニケーションは避けて無駄なおしゃべりに興じ、心から笑うことはせず、つくり笑いだけがうまくなり、本当の痛みを追いやり、鈍い絶望感でやり過ごそうとしている。

こうした人間について言えることが二つある。

一つは、治療の施しようがないほど自発性および自分らしさ欠乏症を患っていること。

そしてもう一つは、地球上に今生きているほとんどの人間が、基本的にこれと変わらないということである。 

人生のさまざまな段階で能力を開発するのも同じである。

ピアノが弾けるようになることも、同僚とうまくコミュニケーションをとれるようになることも、段階を踏まなければならない。

これは個人にも、夫婦や家族にも、組織にも当てはまる原則である。

どんな分野にせよ、現在の能力レベルが10段階の2であるなら、5に達するためにはまず3になる努力をしなければならない。

「千里の道も一歩から」始まる。何事も一歩ずつしか進めないのだ。

学習の一歩は、自分の無知を認めることである。ソローの言葉を借りよう。

「自分の知識をひけらかしてばかりいたら、成長にとって必要な自分の無知を自覚することなど、どうしてできるだろうか」

実業界でも、成長の自然のプロセスを無視して近道を行こうとする例は枚挙にいとまがない。

経営陣は、厳しい訓示、笑顔をつくるトレーニング、外部の介入、あるいはM&A、友好的買収や敵対的買収などによって、新しい企業文化を「購入」し、生産性、品質、社員の士気、顧客サービスを高めようとする。

しかし、このような操作が職場の信頼の低下につながっていることに目を向けようとはしない。

これらのテクニックがうまくいかなければ、別の個性主義的テクニックを探し始める。

かくして、企業文化の土台となる信頼という原則とプロセスはいつまでも無視されるのである。

 

問題の見方こそが問題である

 

個性主義というものが、問題の解決方法だけでなく、問題に対する見方そのものも歪めていることがわかっていただけただろうか。

多くの人が、意識的にせよ無意識的にせよ、個性主義の空約束の幻想から醒め始めている。

仕事でさまざまな企業を訪ねていて気づくのは、長期的展望を持つ経営者は皆も愉快なだけで中身のない話に終始する。

「モチベーションアップ」や「元気を出そう」式セミナーに嫌気がさしていることだ。

彼らは本質を求めている。

鎮痛剤や絆創膏ではない長期的プロセスを求めているのだ。

慢性的な問題を解決し、永続的な成果をもたらす原則に取り組みたいのである。

 

この続きは、次回に。

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