日本型イノベーションのすすめ-②
第一章 日本社会の強みを発揮する再生シナリオ
1小泉・竹中構造改革の果て
小泉・竹中路線の短絡的な二分法の結果、国に誇りをもてない根無し草で協調もできず、責任もとらない自己中心的で不幸な人々を生み出したことでした。モンスター○○はその端的な例といえるでしょう。
「戦争が起きれば自国のために戦う」と国民の大多数が答える一方で、「国民の暮らしに国が責任をもつべき」と答える国民が少ないアメリカとは異なり、国民の大多数が「国民の暮らしに国が責任をもつべき」と答える一方で、「戦争が起きれば自国のために戦わない」との答えをする日本という国で、アメリカ型がそう簡単に追求できるはずがありません。
「自己責任」という安易なスローガンによって、日本人の国に対する基本的な意識が変わると考えたとしたら、為政者としては失格でしょう。
□ 「国のために戦う」と回答した人の割合についての意識に関する
2005年の国際価値調査によると、アメリカは64.88%、
日本は24.63%でした。
□ アメリカ国民の多くが指示しているのが、「能力さえあれば成功できる
機会が確保されていれば、その結果としてほんの一握りの人しか成功し
ないことを容認するという構造のアメリカンドリーム」という国是の
モデルです。
2 日本社会の再設計
「アメリカの目指すもの」と「日本の目指すもの」
社会の活力の維持・向上と、機会と結果における公平と平等のバランスの再設定が大切です。
これが日本社会の再設計のポイントであると思います。
この再設計は、高き志を失い、組織の自己保全と利権拡大に専念し、国民の尊敬を失った霞ヶ関ではできません。
政治を家業とする世襲議員が増えただけで、シンボル操作すらできず、依然、権益の分配に終始する永田町でもできません。
これを、われわれ国民と民間の主導で行わなければならないのです。
まず、「日本人とは何か」を知る必要性
もう一つ忘れてはいけないのは、社会システムや組織構造は、それらが誕生した国や社会の文化や時代性から影響を免れないということです。
従って、当然のことですが、欧米で構築されてきた社会システムや組織構造の理論や手法が、日本にそのまま適用できるとは限らないのです。
日本人が日本社会・組織の基本設計思想とそのメカニズムを根源的に把握・認識できていないということでもあります。
小泉・竹中改革の愚挙のなかの愚挙は、日本人はアメリカ人と大きく違い、不確実性をきわめて嫌い、そのような状況では、力をまったく発揮しないということの理解を欠いたことです。
壊してはいけない文化・共同体・制度が壊され、壊されるべき因習・権威主義・既得権益が温存され、新たな権益に群がる勢力が市場主義や新自由主義を唱えて台頭し、今の閉塞感に満ちた格差社会を生み出したのです。
壊してはいけない「日本的なるもの」を壊すことなかれ
日本社会の強さの基底ともいえる、壊してはいけない「日本的なるもの」を壊しつつあるということです。
今、われわれに求められているのは、日本社会・組織の基礎設計思想に根ざして日本社会を再生することなのです。
日本人の軸足であり、強みは、欧米的な自己を絶対的中心とする「考える」「主張する」「選択する」ではなく、他者を念頭に置いた「思う」「共感する」「合わせる」ひとであることも変わりないと思います。
重要なことは、このシステムや志向性を否定して、壊すことではなく、再度、活性化させることなのです。
その鍵を握るのが、日本的なイノベーション技法の明確化であると思います。
この続きは、次回に。