ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 14
● アクション4—未来型組織の条件
企業の社会的責任とは、第1に、経済的パフォーマンスを高めること。
すなわち社会から預かっている資源を上手に活用し、社会の要求に応えて
利益という形で社会の評価を受けること。
そしてそこから、賃金を支払い税金を納めることが第一義的責務である。
というのがドラッカーの主張である。
そのためには事業に成功しなければならない。
第2の社会的責任としては、ちょうど個人の場合と同じく法人も、自らの行為が
社会や周辺にネガティブな影響を及ぼす場合これを排除しなければならない。
第3の責任は、近年とみに問題として取り上げられているコミュニティとの関わりに
おける責任である。ドラッカーは、最近の論文において、企業はコミュニティ(in)に
あるべきで、その中に埋没(of)してはならないという卓見を吐いている。
● アクション5—サービス経済におけるマーケティングとイノベーション
ドラッカーは、モノ中心の経済からサービス経済にシフトしてきていることの本質を、
次のアングルから絞り出している。
① 製品でなくサービスに対して金が支払われること。
② 提供側のお仕着せではなく、顧客側がより多くの選択肢を持つ
ようになってきたこと。
③ しかも旧来のサービス組織やシステムは機能不全に陥っていること。
そして、そこでのマーケティング活動は次のようなものであるべきだと説く。
① 自らが的確にターゲットを絞り込んで、よく市場を見極める。
② 競争場裡において、いかなる優れたバリューを顧客に与えうるかを見定める。
③ 提供側からのプッシュ(押し出し、押し込み)ではなくて、クライアント・プル
あるいはドリブン(顧客中心・顧客志向)方式で万事を攻めて行く。
④ 顧客の顕在的・潜在的ニーズの満足や充足に留まらず、さらにその真の
喜び(ディライト)を志す。
⑤ 買っていただくモノやサービスそのものではなくて、それをどう使うか、
それで何をするかに焦点を合わせてのマーケティング活動を展開する。
● アクション6—シェア競争時代の終わり
日本企業が軌道修正すべきポイントとして、
① 外部からの規制や、外科手術ではなくて、たえざる自己革新と自己規制と
自己治療を組織の中に内臓(ビルト・イン)しておくことの大事さをまず指摘する。
② 成功のゆえに、とかく驕りやすくなることは自ら戒め、治にあって乱を忘れず、
自己満足や慢心のワナに陥ることのないように、とくに経営者に向かって語りかける。
③ さらに、日本のビジネスのこれまでの成長オンリー、シェア・アップ・オンリーへの
こだわりについては、これは主客転倒もはなはだしい考えであるとして
警鐘を鳴らす。
④ したがって、企業の各目標と重点を置くべき点について適正なバランシングを
考究することが肝要である。
いわゆる「日本的経営」見直し論にもドラッカーは触れつつ、シェアからイノベーション、
シェアから利益性(プロフィタビリティ)、シェアから流動性などと、いくつかの日本の
先進的企業ではすでに重点目標をシフトしつつあることを指摘する。
到来する情報ベース型組織
● アクション7—組織がより水平になる
ここでいよいよ、情報ベース型組織の模索について言及する。
まず、第1に、旧来のヒエラルキーによる階層秩序体制や管理階層は崩壊しつつあり、
これにより、組織のフラット化、水平化が促進されていることに注目したい。
このことの持つ意味をドラッカーは、さらに次の3つの角度から論じる。
① マネージャーでなくても、個人として企業に寄付貢献した人々を
認めること、とくに専門識者の功績を十分認め、それに対して適切な
報酬を払うリウォード・システム(報酬制度)を確立することが重要となってきた。
② このようにスペシャリスト化が進む中で、老若男女を問わずそれぞれの
専門家をいかにチームとしてまとめあげるかが大事な課題となってきており、
チームとして作業をすることのノウハウを学習することが大切に
なってきている。
③ これからの組織は、万事を1人で、あるいは1つの部門で、また1つの
会社で処理するという時代は終わっているとも述べる。
チーム、グループ、戦略的提携、外部委託(アウトソーシング)、系列化、協調融資団、
合弁、ベンチャー、株式の持合い—–その他、コアとなる活動や能力は自組織に残して、
それに磨きをかけつつも、気質も文化も違った人や集団と、いかにしてうまく
パートナーシップを組むかが、きわめて重要になってくる。
この続きは、次回に。