ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 21
□ 外科手術チームに見る未来の組織タイプ
ドラッカーは楽団の比喩のほかに、このところ好んで外科手術チームを未来の組織の
タイプとして引き合いに出す。そこには2つの意味が潜んでいる。
第1は、オーケストラ同様、リーダーたる執刀医の下に各スペシャリストが組織の生命を
維持するために一時的にタスク・フォースを形成し、手術が終われば、このアドホックな
(臨時編成の)組織は解散するという意味である。
第2は、あるときは麻酔の専門医がその場での実質的指導力を発揮し、また別なときは
レントゲン技師がイニシアティブをとるというように、権威ある人がその時々に応じて
状況対応型のリーダーシップを行使する、という意味を示唆しているのである。
けだし21世紀に向けて、示唆に富んだ組織論の構想が、そこに見られるといえよう。
□ ゴールデンタイムを最重要課題に振り向ける
ドラッカーが、広義のいわゆるマネジャーについて、現場でどうあるべきかを
語っている点について紹介しよう。
まず第1は、ドラッカーが、いわゆる目標管理方式や方針管理方式が提唱され制度化されるよりも
ずっと早く、「目標による自己管理」を提言していたことに注目したい。
働く人間の自主性・主体性をかねてから尊重しているドラッカーにとって、これはごく当たり前の
帰結ではある。しかし、昨今のように、知識労働やホワイトカラー労働、サービス労働が、
労働形態のなかで主流を占めることが多くなるにつれ、目標の設定とフィードバックによる
自己軌道修正方式は、ますます大切な条件となってきているのである。
第2に、マネージャーにとって重大な責務は、時間という貴重だがユニークな資源を、
効率よく管理することである。
ドラッカーは言う。
「コマギレの時間を積み重ねたって何ら見のある成果は生まれない。
1日のうちで本当に有意義に使える時間は、せいぜい1時間そこそこ。
しかも、人間にとって気力体力ともに充実している時間は、1日のうちでよくて1~2時間。
そうしたゴールデンタイムをAクラスの貴重な課題に向けて、中断されることなく、
ドカーンとまとめて使わないかぎり成果は生まれないのだ」
□ 経験の共有を積み重ねる
第3に、マネージャーにとって大事な仕事はコミュニケーションである。
コミュニケーションという最大の関心事についても、ドラッカーはまず目標管理が
前提となっていることを明らかにする。
なぜなら、上司は部下に何を期待し、部下は上司やその組織に対してどのような寄付をするかが、
目標管理のプロセスによって明確になるからである。
そしてドラッカーは、自分の責務を遂行するに当たって、上下・横・その他、組織の
内外の人々との関係において、どのような情報が不可欠であるのか、また自分のハッスル
〝報・連・相〟という形での情報提供が、どのヒトにとって不可欠なのかを明確にしておくことを、
コミュニケーションを円滑にするための条件として力説する。
そして、経験の共有を積み重ねてこそ、コミュニケーションの真の根本命題であることを
強調するのである。
この続きは、次回に。