知識ゼロからのイノベーション入門-フェイスブック④
第8話 常識がなければ常識をつくるのがイノベーション。
・ 正しいと考えることを行うだけだ
フェイスブックは徹底した実名登録主義が特徴だ。
架空の誰かをつくったり、複数の自分を使い分けたりすることを許さない。
「2種類のアイディンティを持つことは不誠実さの見本」と言い、実名だからこそ
信頼のネットワークが築けると考える。
実際、フェイスブックへの投稿が原因で別れる人もいる。
アップした情報が採用や評価に思わぬ悪影響を及ぼすこともある。
居心地の悪さを感じる人も多いはずだ。
もっとも、ザッカーバーグは「それは、そんなことをしたそいつが悪い」とそっけない。
ネット上で現実と同じ人間として行動すべきでふり、過去を隠す必要もないと、
こう話している。
「過去に戻って事実を変えることはできない。できるのは自分が正しいと考えることを
行って前に進むことだけだ」
・ 遊びがビジネスになる時
信頼できる実名登録のネットワークが9億人のユーザーを結ぶようになると、
そこにはお金もうまれることになった。
リアルの世界でも口コミはきわめて強い。家族や友人、知人からの「あればいい」
「あれは最低だ」という情報は、他人からの情報や宣伝とは比較にならない影響力を持つ。
ネットの世界では、その広がりと伝達スピードは、リアルをはるかにしのぐ。
つまり、信頼出来るソーシャルネットワークは、そのまま強力な広告媒体になるのだ。
ザッカーバーグも「信頼出来る友達から勧められるほど、人に影響を与えるものはない。
信頼できる紹介者は、広告の至高の目標なのだ」と誇るようになった。
フェイスブックのイノベーションは、実は長い時間をかけて信頼を獲得したことでも
たらされたといえる。匿名のほうが速く多くのユーザーを獲得できたかもしれないが、
そこに信頼は生まれない。
実名利用がユーザー間の常識になるまでこだわったザッカーバーグの勝利だった。
第9話 性善説に立とう。面白いビジネスができる。
イノベーターたちがインターネットの爆発的な成長に何を見出したかは千差万別だ。
スティーブ・ジョブズは「インターネットは音楽を運ぶために生まれてきた」と言って、
iPodを生み出した。
ジェフ・ベゾスは「地球最大の書店をつくれる」と感じて、アマゾンの創業に至った。
ラリー・ペイジたちはネットを人と情報をつなぐ道具と考えて、検索エンジンのグーグルを開発した。
では、ザッカーバーグはどうだったのか。
「世界を潜在的な友人で満ちている場所」と見て、ネットを「人と人をつなぎ、
人にパワーを与える道具」だと考えた。
ザッカーバーグは「人間は本能的につながりたい生き物だ」「ネットは人と人をつなげる
道具であって、それ以上でも以下でもない」と言っている。
テクノロジーの発達は人を孤立させる傾向があるが、ザッカーバーグは逆に考えた。
人は、誰も自分を気にかけてくれないと感じたら、生きていくのがつらくなる。
ザッカーバーグの凄さは、ネットで人間の孤独感を解消できると考えたところにある。
この続きは、次回に。