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会計は「ザックリ」のほうがよくわかる! ⑭

⚪ 会計原則からアプローチする

 

  最後に会計の本質について、少しだけアカデミックに触れておきたいと思います。

  しばしば会計は、「ビジネスの共通言語」と呼ばれます。

  それは、企業会計は3つの公準(企業実体の公準、継続企業の公準、貨幣的評価の公準)と

  一般的に公正妥当と認められる会計原則と会計基準に基づいており、会計についての

  コミュニケーションが同じ土俵の上で成立することを目的としているからだと思います。

  企業会計原則の一般原則と呼ばれるものには、真実性の原則、正規の簿記の原則、

  資本取引・損益取引区分の原則、明瞭性の原則、継続性の原則、保守主義(安全性)の原則、

  単一性の原則の7つがあります。

  また、損益計算書・貸借対照表の原則には、発生主義の原則、費用収益対応の原則、

  総額主義の原則といったものがあります。

  原則というくらいですから、字面は難しいですが中身はだいたい当たり前のことが

  多いと思います。

  会計原則の中でも重要だと考えるものを、条文(昭和24年7月9日経済安定本部企業会計制度

  対策調査会中間報告)を引用して、簡単に説明しておきます。

 

  真実性の原則は、

  「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するもので

  なければならない」、

  決算書は、嘘偽りのない真実なものでないと困るということです。

 

  正規の簿記の原則は、

  「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、性格な会計帳簿を

  作成しなければならない」、

  正しい簿記に基づいた決算書だけが正しく作成されたといえるということです。

 

  明瞭性の原則は、

  「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し会計事実を明瞭に表示し、

  企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」、

  決算書はわかりやすく必要な情報がハッキリと表示されていなければ意味がないということです。

 

  継続性の原則は、

  「企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを

  変更してはならない」、

  会計処理や手続きは継続的に適用していなければ、同一企業の決算書を年度比較することが

  できなくなってしまうということです。

 

  単一性の原則は、

  「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の

  財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて

  作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない」、

  決算書は、正しいひとつの会計帳簿から作成されるので、決算書の形式は違っても中身は

  同じでないと困るということです。

 

  損益計算書原則の発生主義の原則は、

  「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に

  正しく割当てられるように処理しなければならない」、

  つまり、現金の出し入れをベースとする現金主義とは違い、費用や収益が発生した時に、

  会計上は取引として金額を認識するということです。この発生主義が簿記や会計を

  わかりにくくしているのかもしれません。

 

  例えば、クレジットカードを利用した時、お店で買った商品はその場で引き渡されますが、

  実際の支払いは次月以降のカードの引き落し日となり、当月末現在では未払いの状態です。

  それを簿記では、未払金や買掛金と仕訳し記帳します。また、お店側から見ると、

  商品は引き渡しましたが、まだ実際にはお金は払ってもらっていません。

  カード会社からの入金を待っている、未収の状態です。

  それを簿記では、未収金や売掛金と仕訳し記帳します。

 

  次に費用収益対応の原則は、

  「費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関する費用項目と

  損益計算書に対応表示しなければならない」、

  すなわちザックリ言うと、費用と収益を努力と成果という因果関係に基づいて期間的に

  対応計算してくださいということです。

 

  例えば、通販会社がカタログを発行して顧客に送付した場合、カタログから生まれる売上は

  送付時に一時的に発生するだけでなく、数週間から数か月にわたり継続的には発生します。

  したがって、カタログの印刷費用、送付費用等をすべて送付時に一括で費用化するのではなく、

  売上高の発生に応じて(複数の会計期間にまたがる費用を、費用の効果すなわち売上高に応じて)

  費用化することで、期間損益を正しく把握することができるようになります。

 

この続きは、次回に。

 

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