お問い合せ

「孫子 抜粋」-11

101. 囲師必闕

   師(し)を囲めば必ず闕(か)く


   敵軍を包囲する場合は、必ずどこか開けておくこと。

102. 窮寇勿迫

   窮寇(きゅうこう)には迫(せま)るなかれ


   追いつめられた敵に、うかうかと近づいてはならぬ。

103. 塗有所不由、城有所不攻、地有所不争、君命有所不受

   塗(みち)も由(よ)らざるところあり、城も攻めざるところあり、
   地も争わざるところあり、君命も受けざるところあり


   道は通るためのものだが、通ってはならない道も有る。
   敵城があれば必ず攻めるというものではない。攻めないほうがいい場合もある。
   土地は争奪の的となるが、争っても意味のない土地がある。
   主君の命令であっても、従うべきでない場合がある。

104. 将不通於九変之利者、雖知地形、不能得地之利矣

   将、九変の利に通ぜざれば、地形を知るといえども、地の利を得る能わず

   指導者が、臨機応変な考え方、常識にとらわれない発想を持たなければ、
   いくら地形をよく知っていても、それだけでは「地の利」は得られない。

105. 無恃其不来、恃吾有以待也、無恃其不攻、恃吾有所不可攻也

   その来らざるを恃(たの)むことなく、われのもって待つあるを恃むなり、
   その攻めざるを恃むことなく、われの攻むべからざるところあるを恃むなり

    敵のやってこないことを当てにするのではなく、自分に備えがあることを

          当てにしなければならぬ。
    敵の攻めてこないことを頼りにするよりも、敵に攻める隙を与えないわが守りを

          頼りとすべきである。

106. 将有五危、必死可殺也、必生可虜也、忿速可侮也、廉潔可辱也、

    愛民可煩也

     将に五危(き)あり、必死は殺さるべきなり、必生(ひっせい)は虜 (とりこ)に

     さるべきなり、忿速(ふんそく)は侮(あなど)らるべきなり、廉潔(れんけつ)は

     辱しめらるべきなり、
     愛民は煩(わずらわ)れるべきなり


      将を自滅させる五つの心がある。必死になりすぎる者は危ない。

    (心のゆとりを失い、大局の判断もできず犬死にしてしまう。)
      生に執着しすぎる者は危ない。

     (臆病になって卑怯な振る舞いをし、あげくの果ては捕虜にされてしまう。)

      いらだつ者は危ない。

       (怒りっぽくなり、部下からも敵からも足元を見透かされる。)
         潔癖すぎるものは危ない。

    (面子にこだわり、恥を気にして、実を取ることを忘れる。)
         人情家は危ない。

    (そのため気を使い、部下に同情しすぎて、厳しくなれない。)

107. 客絶水而来、勿迎之於水内、令半済而撃之利

   客、水を絶(わた)り来たらんとせば、これを水内に迎うるなかれ、
   半ば済(わた)らしめてこれを撃つが利なり


   敵が河を渡ってこようとしたならば、まだ水辺にいるあいだは知らぬ顔をしておいて、
   河の中ごろまで渡ってきたとき攻撃をかければ効果がある。

108. 凡軍好高而悪下、貴陽而賤陰

   およそ軍は高きを好みて下(ひく)きを悪(にく)み、陽(よう)を貴びて陰(いん)を

   賤(いや)しむ軍を駐屯させるのは高地が望ましく、低地はよろしくない。

   陽の地がよく、陰の地は悪い。

109. 犯之以利、勿告以害

   これを犯(おか)すに利をもってし、告ぐるに害をもってすることなかれ


   人を動かすには、こういう利点があるということを強調すべきであって、こういう不利な点が

   あるということは強調すべきでない。

110. 上雨水沫至、欲渉者待其定也

   上に雨ふりて水沫(すいまつ)至らば、渉(わた)らんと欲する者はその定まるを待て


   上流で雨が降って川面が波立ってきたら、それがおさまるまで川を渡るのは待て。
   (注意深い観察、変化に対する感度、それにものごとについての深い知識が必要である。)

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る