認知症にならないための 決定的予防法㉔
第2部 アルツハイマーを防ぐ4ステップの処方箋
4 ステップ1—–アルツハイマー予防食 思考のための食品
昨夏、元メジャーリーグの投手で、監督としてワールドシリーズで二度優勝を飾った
トミー・ラソーダのお宅にお邪魔したことがありました。
私がトミーと奥さんのジョーンにアルツハイマーを防ぐ食事について説明するあいだ、
友人のトミーはテレビ画面をじっと見据えながら、耳を傾けていました。
私が20分ほどアルツハイマーの予防について口やかましく説明し、黄金の12品目(脳を
活性化するために私が勧める12種類の食品)と<調和のとれた食事療法>(1日を通じて、
よい脂質、脂質の少ない[リーン]タンパク質、複合炭水化物[複合糖質]を三分の一ずつ)に
ついて話したあと、トミーは私の目を見ていったのです。
「そうしよう、ヴィンス。その食事療法を教えてくれ。
何を食べればいいのか、言ってくれ」
アルツハイマー予防食について最初に話をしてから一ヶ月ほどのうち、トミーと昼食を
ともにしたとき、私は彼がアルツハイマー予防食に書かれた特定の食品を、きちんとした
配分で食べてはいるものの、自分がなぜそれをやっているのかまるで理解していないことに
気づきました。
より大きな脳のために、インスリン値のバランスをとらなければならない背景にある科学も
理解していなければ、抗酸化物質や葉酸、オメガ3脂肪酸に富む特定の食品をなぜ食べなければ
ならないのかも理解していなかったのです。
一方、奥さんのジョーンは、このプログラムを実践するすべての理由を調べ、脳の健康を
保つには、インスリン値のバランスを崩さない食品を選ぶことがなぜ大切かといつたことを
含め、科学的な証拠を理解していたのです。
ジョーンはアルツハイマー予防食が気に入っており、何年ぶりかに調子がよいと
感じていました。
この食事療法がほかの多くのダイエット・プログラムと異なるのは、ただ低カロリーのものや、
低脂肪、低炭水化物の食品を食べるのではない点です。
このプログラムは、脳を活性化させる特定の食べ物と、<調和のとれた食事方法>によって、
これらの食品を適切な割合で摂取することに重点を置いているのです。
インスリン–グルカゴンのバランスと脳
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、カロリーの貯蔵を推進し、脂肪をたくわえ、
体の血糖値を調整します。
黄金の12品目を食べ、お勧めするよい脂質、脂質の少ない[リーン]タンパク質、
複合淡水化物[複合糖質]を組み合わせれば(調和のとれた食事方法)、インスリン値と
血糖値を正常に保つことができ、一方でグルカゴンと呼ばれる特別なホルモンが最大限に
分泌されるようになります。
グルカゴンもやはり膵臓でつくられ、肝臓にたくわえられたグルコースを放出することで、
血液中のグルコース(血糖)のレベルを上げます。
グルカゴンは脳の健康にも、ホルモン交響楽団の指揮者であるインスリンを制御するうえでも、
欠かせない物質です。その働きは次のようなものです。
リーンタンパク質(魚、レンズ豆、皮なしの鶏肉か七面鳥、大豆タンパクなど)を食べると、
インスリンよりもグルカゴンが分泌されます。
グルカゴンが分泌されると、タンパク質と脂肪はグルコースに変わります。
一方、単炭水化物(砂糖の多いペーストリーや飴、ジャガイモ、精白小麦粉、精製された
白パスタ類など)を食べると、インスリンだけが分泌されます。
グルカゴンがタンパク質と脂肪を使って糖をつくれば、単炭水化物を直接利用する場合よりも、
はるかに多いカロリーを燃焼します。
精製された炭水化物や糖を摂取するのは、血流のなかのジェット燃料を注ぐようなものです。
リーンタンパク質とよい脂肪、複合炭水化物の適度な組み合わせによって、グルコースが
徐々に増加する代わりに、膵臓は高くなった血糖値を調節しようとして、インスリンを
大量に生成します。
血糖の一部は、筋肉や膵器が必要とするエネルギーとして消費されます。
残りは脂肪に変わります。
ですから、インスリン値が高いということは、脂肪が増えているのと同じことなのです。
この続きは、次回に。