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認知症にならないための 決定的予防法-54

脳の新たな接続を生む

 

脳を鍛える私のニューロビクス戦略の重要な部分は、五感を使って、連想できるものの数と

範囲を増やす手助けをすることです。

一つひとつの記憶は多くの異なった皮質領域において表されています。

そのため、連想のネットワークが強く豊かであればあるほど、脳のニューロンや樹状突起を

失っても、なんらかの保護策がそれだけ多くとれるのです。

脳の<安全網>が大きければ、それだけ問題を解決したり、難題に向き合ったりできる可能性も

高まります。そうなれば、より多くの道筋を使って結論に到達することができるからです。

加齢やアルツハイマー病に関連して非常によく起こる問題、つまり名前の記憶について見てみましょう。

新しい顧客や、子供(または孫)の新しい先生や、新しい隣人に初めて会うとします。

相手の名前を聞いて握手する代わりに、次のことに専念してみてください。

 

1  相手の手の感触に神経を集中させましょう。やわらかい手なのか、ごつごつしているのか、

    冷たいのか温かいのか、それともねっとり湿っぽいのか。

2  においに集中してみましょう。シャワーを浴びたてのようなにおいですか?

     ムスクのような香水をつけていますか?

3   声に集中してみましょう。深い声なのか、大きい声なのか、優しい声なのか、甲高い声なのか。

4  相手の容姿の特徴に集中してみましょう。背がかなり高かったり、低かったりしますか?

    満面の笑みを浮かべていますか?頬にほくろがあったり、珍しい目の色をしていませんか?

5  過去の記憶と、そこから連想されるものに集中してみましょう。

    その人は誰かを思い起こさせますか?大好きな伯母さんや、怖かった先生などを?

 

こうすれば、誰かの名前を一つや二つの連想だけでなく、少なくとも四つのきわめて個別な

つながりをもとに標識をつけることができます。

これは老後の人生で脳を最大限に活用するうえで、非常に重要なことです。

このような戦略を使って脳がまだ最高潮またはそれに近い状態で働いている時期—40代、50代—-に、

五感を活かした連想をかたちづくっておくことが、晩年、脳の処理能力が必然的に衰えても、

それに抵抗する防壁となるのです。

 

自分だけの脳銀行の予備力をつける

 

多くの人は、脳を固定的な銀行口座のように考えています。

だから、破産が訪れるまで—萎縮しつつある不活発な器官で、ゆっくりと細胞や接続部を失い、

しまいに機能しなくなるまで—-は頼れるものだと考えていますが、これは真実とはかけ離れています。

脳の予備力には、新たな神経回路と接続部(神経可塑性)と新たな細胞(神経発生)を生み出す力があり、

これらは脳の預金として利用することができます。

必要なときに頼れる予備金のようなものです。

刺激を受けることで樹状突起(接続部)を形成する能力が幹細胞にあるおかげで、脳の予備力は

無尽蔵にあります。

脳が健康で、つねに刺激を受けていれば、大人になってからも生涯を通じて、脳は成長しつづける

ことができるのであり、実際に成長していきます。

広範囲の研究から、教育の程度が高い人ほど、また授業を受けたり、新しい目的地へ旅行したり、

新しい楽器や外国語を学んだり、脳を活性化する難しいテレビゲームで遊んだりすればするほど、

脳の予備力は深さを増すことがわかっています。

脳を活性化するテレビゲームには、任天堂の「やわらかあたま塾」、「脳を鍛える大人の

DSトリーニング」、パソコン用ソフトの「マインドフィット」、「ラディカ・ブレイン・ゲーム」などが

含まれます。

体の老化の兆候は外見に現れる—-肌にしわが寄り、白髪になり、歯がなくなり、視覚や聴覚が衰え、

猫背なるなど—のにたいし、脳の老化の最初の兆候は明らかではありません。

まずは、徐々に関心が薄れていきます。

脳の老化のこうした最初の症状につづいて、学習、適応、応答などができなくなります。

脳が老化するにつれて、最近の、または短期の記憶もやはり失われていきます。

往々にして、大人は脳を豊かな可能性を利用して、五感を使った連想をしていません。

私たちの多くは、驚くほど決まりきった一連の日課をこなすことで、人生を送っています。

こうすることで、私たちは脳の健康を保つうえで理想的な新しい連想を生む多くの機会を

失っているのです。

それでも、人間の脳は進化するものであり、目新しい情報を探しだして、それに反応すべく

準備しています。

神経回路は、脳が日課をこなすとき以上に、ふだんと異なる作業をおこなっているときに

活性化されます。

服をたたむ、皿を片づける、あるいは書類をホッチキスで留める、といった日々の仕事をしているときは、

小脳や前頭皮質における活動の増加にはつながりません。

そのような受身的な感覚の刺激では、脳の訓練にはならないのです。

 

 

この続きは、次回に。

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