お問い合せ

『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』④

07  考え抜いて作られた「1枚」が人を育てる

「トヨタの1枚」は、人を育てるうえでも「機能する1枚」となります。

「わからないことがあったら何でも質問しろ」と上司は言ってくれたが、当時の私は、

そもそも何がわからないのかがわからない状態でした。

そんな調子で、またたく間に数か月が過ぎていったのです。

 

先輩たちの「1枚」が仕事を教えてくれた

——-このままではまずい。

そう思い、なんとか状況を克服しようと考えました。

そして思い当たったのが、過去に先輩社員たちが作ってきた数々の「1枚」の書類です。

私はこの書類のうち、部内で特に「仕事ができる」と評価されている人たちの資料をプリント

アウトさせてもらい、片っぱしから読み込んでいきました。

このときすばやく、より深く理解するうえで役立ったのが、先輩社員たちが作った「1枚」に

ついていた、「フレーム」と「テーマ」です。

 

わかるための道のりの第一歩は、わからない部分をいかにたくさん発見できるかにかかっています。

わからない部分を1つひとつ潰していけば、やがて全体の理解へつながります。

 

作る過程で自然と情報の「取捨選択」ができる

複雑な案件であればあるほど、紙1枚にまとめるには、情報の取捨選択を考えぬかなければなりません。

考え抜いて作られた「1枚」は、無駄な情報が省かれ、厳選された情報だけが書かれているために、

要点がつかみやすいというメリットもあるのです。

 

08 「トヨタの1枚」はどのようにしてうまれたのか?

『トヨタの伝え方』(酒井進児/幻冬舎ルネッサンス)によると、「トヨタの1枚」文化が定着したのは、

60年代半ばから70年半ばだといわれています。

このとき、要点がまとめられていたのがA3用紙だったそうです。

 

チャーチルの考えと「トヨタの1枚」の共通点

このようにして「A3用紙」が使われるうちに、会議でそれを目にしたほかの社員も真似する

ようになり、それがトヨタ全体に広まっていったようです。

そして、いざ「紙1枚」にまとめることを実践してみると、これまで述べてきたように、数々の

思いもよらない効果が生まれました。

 

09 仕事ができるほど「型」をつかんでいる

仕事の現場にはあらゆる「型」があります。

その代表例が、会社独自の仕事の流れや、やり方といったもの。

トヨタでいえば、「どんな仕事でも常に1枚の書類を用意する」ことが、1つの型でした。

また、上司や部下の仕事のやり方にも一定の型があります。

取引先との交渉方法、顧客のクレームのつけ方などにも型はあるでしょう。

仕事ができる人というのは、このような仕事に関する型を、人より多く把握しています。

型を掴んでいるから、仕事の先の見通しが立ちやすくなります。

次に何をすればよいかわかっているから、仕事もどんどん進む。

また、型をつかんでいると、力の入れどころがわかるので、無駄なエネルギーを使うことなく、

効率よく仕事の質を高められるのです。

 

運動が苦手だった私が柔道で黒帯持ちになれた理由

それは「型」があったからです。

相撲にも柔道にも、基本として身につけるべき型があります。

私は、それを繰り返し練習しました。

この経験を通して、私は、特段すぐれた力をもっているわけではない人間が十分にパフォーマンスを

発揮するうえで、型がいかに大事かということを強く実感しました。

そしてそれは、仕事の現場においても同じです。

仕事の現場における「型」—-それが、今お伝えしている「1枚」です。

 

「トヨタの1枚」に共通して掲げられている5つのテーマ

 トヨタでは、どんな仕事でもベースに「1枚」の書類があり、その「1枚」をもとに仕事が

進んでいました。1つの案件に対して、担当者は最初に必ず「1枚」を作ります。

そこには、その案件の目的や課題、対策、スケジュールなどが書き込まれています。そして、

上司と打ち合わせを行う際には必ずその書類を持って行き、段取りや内容を詰めていくのです。

トヨタの管理職には、係長、課長、室長、部長の4人がいて、大きな案件については、段階的に

この4人との打ち合わせが必要でした。そしてその打ち合わせごとに、「1枚」が用意されるのです。

このような打ち合わせに何度も同席し、先輩社員や上司たちが作った何枚もの「1枚」を見ていく

うちに、そこに共通のテーマが掲げられていることに、私は気づきました。

それは、次の5つです。

  ①   目的

  ②   現状

  ③   課題

  ④   対策

  ⑤   スケジュール

 

「そうか、少なくとも今自分がいる部署では、どの仕事もこの5つのテーマをクリアにしていけば

いいのだ」と気づいたのです。

「会議の議事録も企画書も報告書も、少なくともこの5つの観点から考えてまとめていけば問題はない。

そして、5つがクリアになったら、あとは行動を起こしていくだけ。

そうすれば仕事は進んでいく」と。

自分が当時任されていた仕事の「型」がつかめた瞬間でした。

 

「1枚」があれば仕事の「型」がつかみやすくなる

また、私が作った「1枚」を先輩社員や上司に添削してもらうことがよくありましたが、添削の際、

注目する箇所が人によって異なることに気づきました。

この上司は仕事を進めるときにここにこだわる人、この先輩はここを気にする人、というように、

人それぞれの仕事の型が見えてきたのです。

これも、まずは自分の型が明確になって初めて理解できることでした。

 このように、常に仕事のベースに「1枚」を据えることによって、仕事に関するあらゆる型を

つかみやすくなります。

おそらく多くの人は、1つひとつの仕事の型を、長年の経験の中からつかんでいくのでしょう。

しかし「1枚」があれば、その期間を短縮できます。

仕事ができる人を目指すなら、仕事に関するあらゆる情報を「1枚」にまとめてみてください。

これまで手探りで取り組んできたあなたにも、「型」が見えてくるはずです。

 

 

この続きは、次回に。

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