池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑮
絶対的剰余価値と相対的剰余価値
剰余労働を増やすいちばん単純なやり方は、労働者の労働時間を長くすることです。
給料はそのままで剰余労働時間を2時間増やします。
そうすれば支払いのお金は変わらないまま利益は増えますね。
これを「絶対的剰余価値」と言います。
もう一つのやり方もあります。それは、労働時間は増やしません。8時間労働は変わりませんが、
その代わり必要労働時間を減らします。たとえばこれを5時間にすれば、全体の労働時間は変わらない
わけですから、剰余労働時間は3時間になる、こういうやり方もあります。
必要労働時間を減らすことによって剰余価値を生み出す、これを「相対的剰余価値」と言います。
絶対的剰余価値/相対的剰余価値:絶対的剰余価値は労働時間を増やすことで生み出され、
相対的剰余価値をそのままで必要労働時間を短縮することで生み出される。
労働時間を増やさずに剰余労働を増やす?
相対的な剰余価値を生み出すにはどうしたらいいか。
そのためには労働の生産性を高めればいいわけです。
もう一つのやり方があります。
労働力の再生産費を切り下げればいいんです。労働者の元気を取り戻すための費用を安くできれば、
労働力の再生産費を減らすことができる、つまり給料を減らすことができます。
労働力の再生産費、つまり生活費が前より安くて済むような環境をつくってあげれば、これまでより
安い給料で労働者を働かせることができる。
これが相対的な剰余価値の生産ということです。
資本主義経済全体でさまざまな企業がとにかく安い服をつくろう、食べ物を安く買えるようにしよう、
と努力します。それが結果的に労働力の再生産費を下げることになり、給料を減らすことができ、
それだけ資本家の取り分が増えていくことになる。これがマルクスの理論だということですね。
それぞれの企業が一生懸命努力することによって、私たちは昔に比べるとかなり安上がりの生活が
できるようになる。
そうすると給料が安くても生活できるようになってくる、ということなんですね。
資本主義経済は格差社会を生むと考えた
このように機械化することで労働生産性を高めると、労働者の数が前ほどなくなります。
こうやって必要な労働者の数を余らせることで相対的な剰余価値を生み出すというやり方があります。
つまり過剰労働人口を生み出すんですね。
あなたは過剰だよと言われ、会社を辞めてもらうという人たちが次々と生まれてくる。
マルクスはこの過剰労働人口を産業予備軍と呼びました。
産業予備軍ということは、会社を辞めてもらうけれども、もし労働者が不足したときには応援に
入ってくれませんかと、そういう立場になる人です。
これを私たちの普通の言葉でいえば失業者ということになります。
資本家がこうしてどんどん安い給料で大勢の人を働かせることによって、資本家のもとには
たくさんの資本が蓄積されます。
一方で、失業者がどんどん増えてきます。その結果、失業者には窮乏の蓄積がされます。
貧窮、つまり貧困です。資本主義経済においては、お金持ちはどんどんお金持ちになり、
貧しい人はどんどん貧しくなり、貧しい人がどんどん増えていく。
これこそまさに格差社会ですよね。
資本主義経済とはこういうものなんだとマルクスは考えました。
産業予備軍:労働力が不足したときに働いてもらう失業者のこと。
労働者たちが革命を起こす
※ 大変参考になりまかず、省略させていただきます。
是非、購読いただければと思います。
資本主義経済は格差社会を生むとマルクスは考えました。
社会主義国の誕生
マルクスの『資本論』を読み、そのとおりだなと思った人たちが、世界中で共産党という組織を
つくり、共産主義運動をしていきます。
社会主義の国家は理想の社会を目指した
経済には景気循環はつきものです。供給よりも需要が多ければ景気がよくなる。
景気がよくなれば、資本家が大量にものを生産する。
どんどん生産して需要より供給のほうが増えすぎることによって、ものが売れなくなり、不況になる。
これがさらに深刻になり、恐慌という極めて深刻な状態になると、失業者が街にあふれます。
失業者が増え、供給能力が落ちてくることにより、やがて供給と需要のパランスがとれ、やがてまた
需要が増えてくることによって景気がよくなる。これがやがてまた行きすぎる、ということを
繰り返します。
恐慌:需要の急減、生産過剰、株価暴落、物価下落、企業倒産、銀行の取り付け騒ぎなどが
大規模に広がる。
この続きは、次回に。