お問い合せ

池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ②

デフレとは持続的な物価下落

次はデフレのイメージを見ていきましょう。今度は需要に比べて供給の方が多い。ものが売れない。

いったん売れない状態になると、企業はなんとかものを売りたいので商品の値段を下げます。

そうすると、商品が売れても利益は減りますよね。

利益が減れば、企業は社員の給料を減らします。企業の社員も消費者ですから、給料が減る、

ボーナスがでない、じゃあものは買わないよと買い物をしなくなります。

するとまた、商品を売ろうとする企業は値下げせざるを得ません。

みんながどんどん物を買わなくなり、経済活動が縮んでいく。

これをデフレ・スパイラルと言います。スパイラルというのは、らせん階段のようなものです。

らせんのようにぐるぐる落ち込んでいってしまう、これがデフレのイメージです。

 

デフレ:デフレーションの略称。物価水準が持続的に下落する現象のこと。

 

デフレ・スパイラル:物価の下落と景気の悪化が同時進行する状態のこと。

 

みんなが同じ行動をすると、合成の誤謬が起きる

インフレとデフレのイメージは、ざっくりと理解できたでしょうか。

インフレでものの値段が上がっていったとき、私たちが本来やるべきことは、みんなが買うのを

ぐっと我慢することなんです。

そうすれば需要がおさまりますから、物価の値上がりもおさまったり穏やかになったりします。

でも安いうちに買うことを我慢するなんて、なかなかできませんよね。

結局みんな一人ひとりが早く買おうとする。自分だけが早く買えば得をするかもしれませんが、

みんな同じことを考えます。これを「合成の誤謬」と言います。

誤謬というのは誤りという意味です。インフレになってみんなが同じ行動をすることによって、

どんどん値段が上がっていってしまうのです。デフレはその逆です。

もともと経済学では、一人ひとりの人間が合理的な経済活動をすることを前提にしていました。

できれば値上がりする前に買いたい、値下がりしてから買いたいという行動をみんながとりました。

その結果、いったんインフレになるとものの値段がどんどん上がっていく。

デフレになると、ものの値段がどんどん下がっていくという状態になり、そこから脱出するのが

大変難しくなるのです。

 

合成の誤謬:個人が合理的な行動をとっても多くの人が同じ行動をとることによって悪い事態になること。

 

戦後の日本でインフレが長く続いた2つの理由

日本は戦後長い間、インフレに悩まされてきました。

つまり需要が非常に多かったのです。戦後の日本は経済が豊かになっていって、どんどん給料が増えた。

給料が増えると、いろいろなものを買いたくなりますよね。

かつて日本ではクーラー、マイカー、カラーテレビのことを3Cと言いました。

このような状況では供給よりも需要のほうが多くなり、ものの値段がじりじりとあがっていくインフレに

なります。日本でインフレが続いた理由はもう一つあります。

1973年の第四次中東戦争です。

この戦争により、中東の国々から石油が買えなくなるのではないかという恐怖が世界中に広がりました。

日本では非常に高い値段で石油を買わざるを得なくなり、重油やガソリンの値段が上がったために

多くのものの値段が上がり始めました。

 

3C:クーラー、マイカー、カラーテレビの英語表記の頭文字をとってこう呼ばれた。

 

中東戦争:パレスチナをめぐるイスラエルとアラブ諸国の戦争。1948〜73年の間に4度起きている。

 

インフレには2種類ある

このように、インフレには需要が引っ張ることによって物価が上がっていくものと、コストが

押し上げられることによって物価が上がっていくもの、大きく分けてこの2種類があります。

需要が増えて、ものの値段があがっていくことを「ディマンド・プル・インフレ」、一方、

コストが上がることによってものの値段が上がることを「コスト・プッシュ・インフレ」と言います。

 

ディマンド・プル・インフレ

 ↓       ↓

 需要   引っ張る

 

コスト・プッシュ・インフレ

 ↓      ↓

 費用   押し上げる

 

消費者物価指数の作り方—家計調査と指数品目

さて、インフレでものの値段が上がると言いましたが、インフレ率はどうやって出すのでしょうか。

これは国の総務省統計局が消費者物価指数というものを計算して、前年よりどれくらいものが

値上がりしたか、その割合を見ています。

消費者物価指数がどんどん上がっていけばインフレ、下がっていけばデフレということになります。

消費者物価というのは、要するに私たちが買うものの値段のことです。

それではその出し方を具体的に見ていきましょう。

まずは全国から約9000世帯を選び出し家計調査を行います。

それぞれの世帯に調査員が訪問して、1カ月間家計簿をつけてくださいとお願いします。

これによって日本の9000世帯がどういうものを買っているのか、そこに使っているお金は

いくらなのかという比率が出てきます。さらにその比率をもとに、その中でみんなが買っている

代表的な品目を選びだします。これを指数品目と言います。

 

消費者物価指数(CPI): 毎月1回発表される消費者物価の動きを表す指数。

           基準年を100とした指数で表す。

 

家計調査:統計法に基づき、総務省が実施。全国約9000世帯に家計簿記入を依頼し、

     毎日の収入と支出が一つひとつ記帳される。

 

 

この続きは、次回に。

 

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