超ロジカル思考 「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング㉔
・ ルイス・ガースナーの教え
「業界全体の変化に賭けろ」
Louis Gerstner
ガースナーは、マッキンゼー、アメリカン・エキスプレス、RJRナビスコ会長兼CEOを経て、
1993年に倒産の瀬戸際にあったIBMにCEOとして就任した。
IBMはオープン化とダウンサイジングという、コンピュータ業界の環境変化に乗り遅れ、
シリコンバレーを中心とした西海岸の起業家たちに、事業領域を侵略されていた。その結果、
1991〜93年にかけて累積で1兆5,000億円を超える赤字を計上することになる。
IBMは経営環境が根本的に変わる中で、新しい戦い方を習得できていなかったのである。
ガースナーはこうした環境変化の背景にある力を見極め、その先に続く業界全体の将来像を解明した。
それが現在、我々が「クラウドサービスの時代」と呼ぶ世界観である。
それを解明したことが、IBMの復活を可能にした。
つまり、玄人であるが故に見えなかった世界、あるいは見たくなかった世界を、素人のガースナーが
解明したのである。
ガースナーが当時考えていたことの多くは、実際これまでに実現してきている。
ガースナーはIBMの再生にあたって、ふたつの大きな賭けに出る。
ひとつは業界全体の方向性に関する賭けであり、もうひとつはIBM自身の戦略に関する賭けだ。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
Exercise 7-3
ガースナーはなぜ業界の常識に反して、IBMを分割すべきでないと考えたのでしょうか?
⭐ ヒント
ガースナーの経歴の中に手がかりがあります。
ガースナーはアメリカン・エキスプレスというITのヘビーユーザーに身を置いていた。
顧客の側からIBMを見たことのあるガースナーには、顧客の内面を感じ取ることができたのだ。
このため、ガースナーは業界の常識に反して、IBMを総合IT企業として存続させることを決断する。
その上で、自社のミドルウェアをオープン化し、他社製のハードウェアにも対応できるように改めた。
ガースナーはIBMの垂直統合型のビジネスモデルは一応維持しながらも、ミドルウェアと
サービスに関しては業界横断的な水平型ビジネスモデルを確率した。
アップルの、ある方向から見ると垂直統合型で、別の方向から見ると水平型に見えるビジネス
モデルの先例がここに見られる。
ガースナーは情報革命という数百年に一度の大波に直撃されながら、その先に生まれる業界全体の
未来を正確に予想した。
その中で、サービスやミドルウェアに価値がシフトしていくことを見出し、そこに賭ける形で
IBMの事業構造をつくり直す。それがその後のIBMの再生を可能にした。
仮にガードナーが自社の中だけを見ていたり、過去の常識に囚われていたら、IBMは情報革命に
よって消えていった企業として名を連ねていたかもしれない。
環境が大きく変わるときは、自社だけを見ていても解決策は見えてこない。
暗黙のうちに前提条件とみなしている業界の構造自体が、この先どう変わっていくのか。
そこに視野を広げることで、はじめて解決策が浮かび上がってくることがわかる。
Exercise 7-4
あなたの関係している業界の構造が、情報革命によってこの先どのように変わっていくのか
考えてみましょう。
その中で、価値がどこにシフトし、どこに新しい価値が生まれてくるのかについて考えてください。
この続きは、次回に。