ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ⑬
✔️ イノベーションを起こして復活した米USAトゥデー
それは、新しい事業を探究する部署には、(1)そのビジネスに必要な機能(例えば開発・生産・営業)を
すべて持たせて「独立性」を保たせること、(2)他方でトップレベル(例えば担当役員レベル)では、
その新規部署が既存の部署から孤立せずに、両者が互いに知見や資源を活用し合えるよう
「統合と交流」を促すこと、が重要であるという主張です。
すなわち、新規事業部署にはなるべく「知の探索」を好きなようにやらせて、他方で「知の深化」は
上層部で既存事業分野との融合を図ることで実現すべきだ、ということなのです。
タッシュマンらは、両利きの組織体制の成功事例として、米大手新聞社のUSAトゥデーを
取り上げています。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
この論文でタッシュマンらは、このように革新的なビジネスを生み出した企業の35の事例を分析し、
その多くが両利きの組織体制をとっていたと結論づけています。
✔️ 両利きのリーダーを目指せ
しかしながら、ここまでの話を読んで、「確かにこれは理想的だけれど、この体制が機能するには、
それに資する能力が経営トップになければ意味がないだろう」と感じられた方もいらっしゃるのでは
ないでしょうか。
まさにこの疑問に呼応するかのように、タッシュマンは別の研究者たちと、2011年にHBRで
「両利きのCEO(最高経営責任者)」というタイトルの論文を発表しました、この論文では、
両利きの経営を企業が実現するために必要なリーダーシップのあり方が議論されています。
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
経営者には三つの「両利きのリーダーシップ」が求められる、とタッシュマンたちは説きます。
それは(1)自社の定義する「ビジネスモデルの範囲」を狭めず、多様な可能性の探求できる
広い企業アイデンティティーを持つこと、(2)「他の探索」部門と「知の深化」部門の予算対立の
バランスは経営者自身がとること、(3)そして「知の探索」部門と「知の深化」部門の間で
異なるルール・評価基準をとることをいとわないこと、だと述べています。
いかがでしょうか。「両利きの経営」は、海外の経営学で統計分析などによる研究が積み重ねられて
いるだけでなく、タッシュマンの一連の論文のように、実務家への示唆となるような論文も
発表されてきています。そして何より、日本を代表する経営者たちの行動・着想法にも通じる
ところがあるのです。
繰り返しですが、私は少なからぬ日本企業がコンピテンシー・トラップに陥っていると考えています。
この状況を打破するには、「両利き」の組織体制とリーダーシップが求められており、
そして何よりみなさん自身が「知の探索」に出ることが必要なのではないでしょうか。
この続きは、次回に。