お問い合せ

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ⑯

✔️ なぜ弱いつながりのほうが優れているのか

 

人脈・友人関係など「人のつながり」には、強弱があります。

例えば親友同士は「強いつながり」で、ただの知り合い同士は「弱いつながり」です。

直感的には強いつながりのほうのメリットが大きそうですが、実はこれまでの社会学・経営学の

研究蓄積により、「新しい知の組み合わせには、むしろ弱いつながりが効果的である」ことが、

経営学者のコンセンサスになっているのです。

これは、二つの理由に基づきます。

 

第一に、弱いつながりからなるネットワークは、全体的にムダが少なく効率的です。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

第二に、弱いネットワークは簡単に作れます。

誰かと親友になる(強いつながりをつくる)のには時間がかかりますが、とりあえず名刺交換して

メールをするくらいの関係になるのは、それほど難しくありません。

結果として弱いネットワークは遠くまで伸び、そこには多様な知見・背景を持った人がいますから、

そういった人たちと弱いネットワーク上でつながれるのです。

ここまでくれば、お分りかと思います。

「知と知の新しい組み合わせ」すなわち、前々章で述べた知の探索のためには、「幅広い

人々からの多様な情報が効率的に流れる」ネットワーク上にいる方が有利です。

そして、そのようなネットワークは、「弱いつながり」からできているのです。

したがって、弱いつながりの人脈を多く持つほうが、人はクリエイティブになれるのです。

 

✔️ 「チャラ男」のほうが、クリエイティブになれる

 

実際、これまでの経営学の実証研究で、「弱いつながりを多く持つ人は、創造性を高められる」という

命題を支持する結果が多く得られています。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

このような主張は、職人気質の強い日本企業の開発部門などでは受け入れにくいかもしれません。

あちこち色々なところに顔を出したり、異業種交流会・勉強会に頻繁に参加したり、

名刺を配って人脈を広げることは、日本では「チャラチャラしている」「あいつは名刺コレクターだ」と

いったイメージを持たれがちです。しかし、これまでの研究結果が示すように、そういう

フットワークが軽い人こそ、実は長い目で見ると多くの「新しい知の組み合わせ」を試し、

創造性を高めている可能性があるのです。

 

✔️ クリエイティビティーとイノベーションは違う

 

ここからがさらに重要なポイントです。

では弱いつながりを多く持って創造性を高めれば、それがそのままイノベーションに直結するか

というと、実はそうではありません。

本章冒頭で述べたように、そもそも創造性とイノベーションは、学術的にも実務でも、

互いに異なる概念です。なぜなら、いくら創造的で新しいアイデアを出しても、それが製品化、

会社での導入・特許化など、実際に活用されるところまでたどりつかなければ「イノベーティブ」

とはいえないからです。

アイデアは「実現(Implement)」されて、初めて周囲からイノベーティブと評価される可能性が

出てきます。すなわち、創造性とはあくまでイノベーションをゴールとするプロセスの通過点に

過ぎず、イノベーションという成果を得るには、まずアイデアが「実現」される必要があるのです。

この点に注目したのが、米ワシントン大学のマーカー・バエアーが、2010年にAMJに発表した

論文です。バエアーはこの論文で、企業内のクリエイティビティーの高い人(発案者)が、

さらにそのアイデアを「実現化」するために、何が必要かを研究しました。

バエアーは、そのためには発案者に二つの条件が必要だと主張します。

 

第一に「発案者の実現へのモチベーション」です。

しかし意欲だけ高まっても、本人にその力が備わっていなければ実現はできません。

そこでバエアーが注目した第2の条件は、その発案者の「社内での人脈」です。

しかも、「その人脈は『強い』ものでなければならない」という主張です。

いくらクリエイティブな人でも、アイデアを実現するまでに持っていくためには、

社内の多くの人の賛同を得なければなりません。

組織が大きくなればなるほど、稟議書を何カ所も通す必要がありますし、根回しも必要です。

ここで発案者が社内で強い人脈を張り巡らしていれば、それは大きなアドバンテージになります。

社内に強いつながりのある人を多く持っていれば、彼らがサポーターとなってくれるので、

アイデアが実現にたどり着く可能性は高まるからです。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る