お問い合せ

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 -57

終わりに

 

本書を読んでくださって、ありがとうございました。

本書を通じて、皆さんが少しでも世界最先端の経営学について知識を得たり、思考の軸・考え方の

整理になるものが見つかったりしたのであれば幸いです。

 

本書を締めくくるにあたり、三つ述べさせてください。

 

第一に、経営学の知は、本書で紹介するよりもはるかに膨大であるということです。

本書では他のビジネス書・経営学書と比べても、かなり広範なテーマを扱っています。

しかしそれでも、各テーマで紹介できることは限られています。

したがって、本書を読んで「これが経営学のすべてだ」と思わないでいただきたいのです。

経営学に限らず、学問とは大きな「知の風船」を少しずつ膨らませるようなものだと私は考えています。

本書では、なるべくその全体像を描きつつも、結果的に紹介できた「知の量」は、もしかしたら米粒の

ような大きさかも知れません。

それほど、世界の経営学の知は膨大なのです。ぜひそのことを、心にとめていただけると幸いです。

 

第二に、本書で書いてあることを「これが絶対に正しい」と思わないでいただきたいことです。

第2章で述べたように、それでは「正解を求める」姿勢になってしまいます。

あくまで、みなさんがビジネスをこれから考えていく上での「思考の軸」として使っていただければ、

と思います。

実際、この世はまだ分からないことで満ちあふれています。結果として、研究とは、先に進むほど

「これが正解だ」となかなか言えなくなるものです(少なくとも私はそう思います)。

「勉強」は進むほど正解が分かってきますが、「研究」は全く逆なのです。

実際、最前線で真剣に研究している研究者ほど、「これが正解だ」と言うことには慎重なものだと私は

思います。テレビに出演した学者が、司会者から「結局、何が正しいですか!」「分かりにくいから、

一言で正解を言って!」などと詰め寄られて口ごもることがありますが、そもそもその人は真摯に研究

しているからこそ、「絶対にこれが正しい」とは言えないのでしょう(これは私自身、最近メディアで

どうしても「はっきり」言うことを求められるので、自戒することでもあります)。

 

第三は、ビジネススクールのあり方です。

実は、本書のタイトルに「ビジネススクールでは学べない」とつける案は、出版社から提案を受けた

ものです。

私は、このタイトル案を受け入れるか、迷いました。

確かに第1章にあるように、ビジネススクールで最先端の経営学が教えられないのは事実ですが、

しかしそれをタイトルにつけてビジネススクールそのものを否定する印象を与えたくなかったのです。

私は、ビジネススクールはとても素晴らしいところだと思います。

米国にいるときもそう思っていましたが、日本に戻って早稲田大学ビジネススクールに所属してから、

特にその思いを強くしています。

確かに、第1章で述べたような構造的な理由で「実務に使う経営学の基礎」は徹底して学べます。

さらに、私がいる早稲田大学ビジネススクールでは、コンサルティング業界の頂点を極めた実務家

教員が多く在籍し、多くのトップ経営者がゲストスピーカーとして毎日のようにやってきます。

こうした方々の「実践知」を学び、刺激を受けられるのは、素晴らしいことです。

しかし、ビジネススクールのそれ以上の価値は、何より「人との出会い」にあると私は考えています。

例えば、先に述べたような教員との出会いがそうですし、何よりも、様々な業界からやってきて志を

共にする動機・一生の友人という財産が作れることは、代え難いものがあります。

2年間のビジネススクール生活を終えて、大きく成長した学生が卒業するのは、本当に感慨深いものです。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る