IoTビジネス入門 ⑬
第3章 IoTで変わるクルマと社会
第二章では、家ナカのIoTについて説明してきました。
では、「家のソト」はIoTによってどう変わるのでしょうか。
一番の注目は最近話題の自動運転カーでしょう。おそらくニュースか何かで一度くらいは見たことが
あると思いますが、未来のクルマは手放し運転が可能になるのです。
そして実は、クルマがインターネットにつながる価値は、何も自動運転カーの分野だけではないのです。
では、この変化で、皆さんの生活や社会が、どう変わっていくのかを見ていきましょう。
■ 自動運転カーの時代がやってくる
2015年、米国Google社が自動運転カーをマウンテンビュー市街地で走行させたというニュースが流れ、
大きな話題になりました。
マウンテンビューは、アメリカ西海岸、シリコンバレーにある街で、「Googleタウン」と呼んでも良い
くらいGoogleの関連会社が多い街です。
自社のお膝元とはいえ、交通事故の危険性を考えると、街中で自動運転カーを走らせるのはさまざまな
リスクを負う覚悟が必要だったでしょう。
自動運転カーの判断がいかにヒトの判断より正確であったとしても、ヒトが亡くなった時の補償は
確率論では計れない感情論があります。
しかし、こういう実証実験を繰り返していく中で、クルマの自動運転はかなり現実的になっていると
いいます。もちろん、トヨタや日産を始めとする国産メーカーも自動運転カーの研究は進めていて、
日産は2016年に、高速道路の一部通行において自動運転を採用したクルマを導入すると発表しています。
一方で、2015年時点でのクルマに関する話題は、「自動運転」という文脈ではなく「安全制御」という
文脈の中で語られることが多かったのです。
クルマには高度なセンサーが搭載され、衝突しないようにクルマとクルマの距離、クルマと障害物との
距離などを一定に保ちます。仮にあなたが居眠り運転をしたとしても、前のクルマに衝突したりしなく
なるのです。
高度化されたクルマのセンサーは、何も前後のクルマとの距離を見るだけではありません。
細い道から飛び出してきたヒトをどのようにセンシングするか、というテーマでも進化が進んでいる
のです。また、クルマ単体の進化だけでなく、クルマがインターネットにつながることで、クルマの
位置や状況を把握することができるようになります。
その結果、例えば事故を起こした場合、ドライバーにとって不慣れな土地で、自分がどこにいるのかを
明確に伝えることができない場合でも、緊急車両をクルマの位置情報をもとに正確に手配することが
可能となるのです。
他にも、今後インターネットにつながるクルマが広がる中で、クルマのセンサーが取得した情報をもとに、
「飛び出しが多い道路」「接触事故が多い場所」などの情報がクラウド上に蓄積されていき、道路状況を
細かく把握できるようになることが考えられます。
さらに、法人で利用されるトラックについても、インターネットとつながることで新たな価値が生ま
れてきています。
現在、国土交通省の指導で、トラックドライバーの安全運転に対する評価が必要になってきていて、
この背景から、多くの物流企業ではドライブレコーダーを導入し始めているのです。
このドライブレコーダーは、加速度を感知するセンサーが搭載されているので、急発進、急ブレーキ、
ハンドル操作の滑らかさ、道路の凹凸などを測定することができます。
この運転状況を評価することで、ドライバーの運転そのものを安全にする取り組みが可能となるのです。
さらに、ドライブレコーダーで収集した運転状況を地図情報に重ね合わせることで、「どこの道路で、
どういう運転操作が必要か」ということもわかります。
このデータは道路自体の設計に関しても、意味のあるデータとなります。
また、業務的な側面としては、トラックから位置情報を発信することで、各トラックの位置や荷物の
配送状況をつぶさに把握できるようになります。
これを利用することで、注文から配送までの時間を最短にするために、「どのトラックに、何を、
どのルートで」配送すれば良いかを指示することが可能となるのです。
その結果、今後の物流網はとても効率化されていくことが予想されます。
これらの例でわかるように、クルマにおけるIoTは、何も自動運転だけではないのです。
クルマに後付けするようなモノであっても、インターネットにつながることで新しくできることは
多いので、クルマ業界以外の企業にもチャンスが多い分野だといえます。
この続きは、次回に。