通勤大学実践MBA 事業計画書 ⑧
2-8 競合は静止してくれない
ビジネスプランの要素として、競合と自社の比較は重要です。
「競合と比較して自社はこれだけ競争優位がある」というアピールは強力であるからです。
一方、時間軸を忘れて競合比較をしてしまい、自社の優位性を考えているケースも多いので
注意が必要です。
たとえば、あるITベンチャー企業が「自社のサービスがいかに広い範囲を網羅しているか」と
いうことを証明すべく、自社が提供していて、有力競合企業が提供できていない項目にも
「×」がついていたのです。
競合に関する調査は前年のもので、自社のサービスは最新のものだったために起こったミスと
いうことでしたが、これでは公平かつ正確な比較とはいえません。
また、現在開発途上の開発型ベンチャーのケースもあります。
「二年後に、自社の商品はかくかくしかじかのパフォーマンスになる。それは某有力競合企業の
何十倍である」という表を提示したときです。
“これはすごい”と投資家たちは初め感心していたのですが、よくよく見ると、それは二年後に
競合の現在のパフォーマンスを何十倍も上回るという内容だったのです。
特にその分野は技術革新が激しく、競合企業が二年間もじっとしているなどということは考えられません。
自社の将来と競合の現在では時制が一致せず、レベルがそろわないため比較の意味がないのです。
これはビジネスプランを評価する側が注意すべき点でもあります。
裏を返せば、こうした実際のビジネス戦略上で、競合の変化・成長を想定しながら戦略立案・
準備ができるベンチャー企業は、読み手からの評価が高くなるということでもあります。
◉ 競合比較の落とし穴 ◉
競合も自社同様成長する
↓
過去の競合と現状の自社を比較していないか
↓
将来の自社と現状の競合を比較していないか
※ この二点に注意すべき
2-9 リスク要因の説明
どんなビジネスにもリスクはつきものです。
100%安全かつ確実なビジネスなどありません。
しかし、それでも可能であれば、リスクは軽減されるべきです。
リスクは大きく分けて、どんなビジネスにもあてはまる一般的なものと、そのビジネスにとって
固有のものの二つがあります。
一般的なリスク、たとえば景気停滞などへ対処については経営陣の能力に関わってくるため、
詳細な説明がなくとも、経営陣の過去の経験などから読み手がある程度判断できるかもしれません。
一方で、固有リスクのほうは詳細な説明が求められます。
まず大切なのは、経営者がそのビジネス特有のリスクについて認識しているかどうかです。
そのビジネスについて詳しいはずの経営者が、読み手が指摘するまで特定の固有リスクについて
考えたことがないなどというような状況であれば、投資または融資を検討している者は不安を
抱かずにはいられません。
次に、認識したリスクについて、どのような対処方法を考えているかを示さねばなりません。
もちろん、場合によってはリスクそのものが非常に軽微だと説明することもあるでしょう。
たとえば、「競合他社が真似をした場合どうするか」と問われた場合には、競合他社への対処策を
説明することもありますし、いかに技術的・ビジネス的に真似することが難しいかを説明することも
あります。
リスクの所在地およびその対処方法を説明したからといって、リスクがなくなるというわけでは
ありません。重要なことは、可能な限りリスクを軽減させる努力をすることです。
リスクがあるからという理由で、投資家は投資をやめるわけではありません。
彼らは、リスクに見合うリターンが得られるかどうかを問題とするのです。
◉ 一般的なリスクと固有のリスク ◉
① 一般的なリスク
景気停滞などへの対処
↓
経営陣の過去の経験など、能力である程度判断可能
この続きは、次回に。