危機の時代 ジム・ロジャーズ ②
・深刻なインドの経済危機
インド経済の危機はもっと深刻だ。
2019年11月には、同国の中央銀行が、デフォルトを起こした住宅金融会社の
破綻処理に踏み切った。
インドの銀行では不良債権比率の上昇が続いていたため、以前から中央銀行が
検査を厳格化して引当金を積むよう指示していた。
不良債権の増加が大変な状況にあることが、鮮明になっている。
20以上ある国営銀行がインフラ関連などを中心に過剰な融資をしてきたことが、
問題を大きくしている。だから火消しが必要になっているのだ。
経済が好調という印象が強かった米国。
2008年秋にリーマン・ショックが起きてからすでに10年以上が経ち、
2020年2月まで史上最長の好況が続いてきた。
ここまで長期間、強気の市場が続いたことは過去に一度もなかった。
しかしながら、好景気には常に終わりがやってくる。
世界中のあらゆる国で、長い間続いた好況も必ず終わりが来る。
米国では再び借金が膨れ上がっており、危険な兆しが現れていた。
とりわけ問題なのが低金利だ。
銀行に預けていても利子が付きにくいために、投資家が債券だけでなく、
株式に投資する傾向にも拍車がかかっていた。
低金利により、株と債券の価格上昇が続くのは良いことではない。
米国の金融市場は世界経済に果たしている役割が大きいので、ひとたび危機が
起きるとショックはグローバルに広がる。
・世界を救った中国も借金漬けに
アジアでとりわけ注目すべきなのは、中国だ。
リーマン・ショックが起きた2008年の時点で、中国は負債をほとんど
抱えていなかった。
嵐が来ることに備えて、たくさんのお金を蓄えている状況にあった。
実際に(不景気という)〝雨〟が降り始めると、中国は貯めていた金を使い始め、
世界経済を助けた。
しかし、そんな中国も今では多くの債務を抱えている。
今回は、リーマン・ショックの時と違って、中国経済が危機に陥るという
シナリオも考えられる。
それが現実になると多くの人に衝撃を与えるだろう。
中国で大きな企業破綻が起こると、それは間違いなく、新聞のトップページを
飾ることになるはずだ。
欧米や日本に住む人の多くは、中国やインドの企業について詳しいことを
知らない。
インドには、赤字続きで本来なら倒産すべきなのに生き残っている〝ゾンビ企業〟が
多数存在する。インド企業全体の3割に上るとされるほどだ。
インド政府は銀行の不良債権処理を急いでいたが、かつて日本のように
ゾンビ企業を保護しており、対応が甘かったと言わざるを得ない。
日本でも同様のことが起きたことがあるが、それはクレイジーだ。
倒産すべき企業が生き残ると経済には悪影響を与える。
中国も同様の問題を抱えるが、救うべきでない企業は破綻処理すると言っている。
・米国が抱える巨額の借金
米国には財政が破綻したり、破綻寸前になったりしている地方自治体が目立つ。
米国は世界史上最大の債務国であり、借金の水準はますます高くなっている。
トランプ大統領は、問題を解決すると言っているが、実際には悪化させる一方だ。
トランプは歴史上のどの大統領よりも借金を増やしている。
財政再建はよく話題になるが、緊縮財政を実行に移すケースは少ない。
誰もがもっと多くのお金を借りて、もっとたくさんお金を使おうとしている。
だから状況はますます悪くなるだろう。
私の人生の中で、もっとも悪い状況になるはずだ。
□ カオス
英語:chaos
カオス(英: chaos)またはケイオスとは、「混沌」を意味する英語である。
無秩序で、さまざまな要素が入り乱れ、一貫性が見出せない、ごちゃごちゃした
この続きは、次回に。