お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉖

・外国人が勝手に決めた国境線

 

第一次世界大戦中の1916年、中東でも同じことが起きた。

英国、フランス、ロシアの間で、オスマン帝国の領土を分割する秘密協定が

結ばれたのだ(編集注:サイク=ピコ協定を指す。ロシアは1917年に革命が

起きて、その後ソ連が成立し、実際は領土を獲得できなかった)。

 

住んでいる人たちに何のことわりもなく、勝手に国境線を引き、この国は

イラク、この国はシリアなどと決めていった。

現在のイラクの地域に当時住んでいた民族グループはお互いを嫌いあって

いたので、ばかげた行為だった。

それでも英国とフランスなどは自分たちで境界線を引いて、「これでいい。

問題ない」と言った(編集注:イラクとトルコ、シリアにまたがる地域に

居住するクルド人問題の起源はここにある。

英国は同時に、パレスチナにユダヤ人居住区をつくるというバルフォア宣言や、

アラブ国家の独立を約束するフサイン・マクマホン協定も結んでおり、

「三枚舌外交」と批判された。

英国の身勝手な外交は、後のパレスチナ問題にもつながっている)。

 

これは100年も前に、現地に住んでいた人々と全く関係のない欧州の覇権国に

よって定められた取り決めで、現地の人たちは今もその対価を払わされている。

アフリカ諸国は、今は独立しているが、国境は当時と同じだ。

アフリカの国境は、ベルリン会議の頃からほとんど変わっていない。

それらの国境はアフリカの人たちと全く関係がない白人たちによって

定められた。

 

・薄れていく欧州との絆

 

しかし、アフリカは変化している。今、中国人は現地で、家電から日用品まで

あらゆる種類の製品を販売し、インフラを含めた多様な投資を行っている。

中国が建設している鉄道は、少なくとも生産的な資産だ。

アフリカ諸国は、鉄道建設のための借金を返済できないかもしれない。

しかし、たとえアフリカ諸国の政府が鉄道を手に入れることができなくても、

中国人は幸せだ。巨大なアフリカ市場を握ることになるからだ。

それでも私は、2025年にアフリカが中国の植民地になっているとは思わない。

しかし、アフリカにおける中国の存在感はいやおうなく増している。

それが今起こっていることだ。中国にはお金があり、アフリカ諸国の

首脳をしばしば北京に招待しているので、彼らは中国の言葉に耳を傾け、

楽しい時間を過ごしている。

このため2025年には、今よりもはるかに多くのアフリカ諸国の人が、

英国、フランス、米国よりも中国に関心を持っているだろう。

 

25年前に西アフリカ諸国に行ったら、多くの国々で、大臣が黒人であっても、

オフィスにはフランス人がいた。そこにいたフランス人たちが大臣の仕事の

手助けをしていた。

例えば保健大臣の隣では、フランス人の医師が働いていた。

それはフランスが西アフリカを支配した時代の残滓(ざんさい)だったが、

すべて過去の話だ。今はそうではない。

おそらく中国人がフランス人の代わりに、様々なアフリカ諸国の政府に

食い込んでいることだろう。

 

私は中国人はたぶん賢いと思っている。

かつてアフリカの多くの国を支配していたフランス人や英国人のように、

力によってアフリカ諸国を支配しようとしていないからだ。

「一帯一路」という巨大経済圏の構想を中国は掲げている。

しかし彼らは500〜600年前のスペイン人やポルトガル人のように、新大陸を

発見して世界の地理を変えたわけではない。

200年前に鉄道が誕生して、地理が完全に変わったことを覚えておくべきだ。

米国にはシカゴという都市がある。まさに鉄道の発展に合わせて大きく

なった街だ。鉄道がなければ、シカゴのような大都市は誕生しなかった

だろう。鉄道がシカゴを作った。

 

現在、中国の一帯一路は、地域の交通を変え、おそらく世界を変えている。

こうした変化は、歴史上あまり起こらない。しかし一帯一路が進展すれば、

私たちが知っている世界のあり方を完全に変えるだろう。

取り残される国々や人々も存在するだろうが、19世紀のシカゴのように

発展する地域も出てくるだろう。

中国から欧州までを結ぶいずれかのルートが、新しい支配的なルートに

なるだろう。これは非常に強力なものになる。

中国には、お金がたくさんあり、ビジョンがあり、自分たちが何をしたいかを

知っているからだ。シカゴは偶然生まれた街かもしれないが、今でも存在する。

鉄道がそこに敷設されたからだ。

「一帯一路」のために、中国から投資を受けたい国々の行列ができて

いるような状況が生まれている。

そのアイデアに協力する国は、中国による経済的な支援を受けることができる。

 

 

この続きは、次回に。

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