お問い合せ

ブランディングが9割 ⑫

・「売りたい人」がターゲットではない

 

ターゲットを「売りたい人」ではなく「買いたい人」、つまり、「価値に

対価を支払っていただく方々」という視点で考えることが必要です。

 

ターゲットがより具体的になれば、お客さんの求めていることが想像でき、

ブランドがターゲットとするお客さんに提供する価値も、明確になって

くるはずです。

先のスーパーの場合、お客さんに満足してもらうためのカギとして、

「より鮮度の高い生鮮食品を」「毎日の献立に悩むお客さんに」「わりと

短時間で簡単に料理ができる、毎日のレシピを提案する」といったことが

見えてくると思います。

ターゲットを具体的に、明確にすることで、よりお客さんの心に刺さる展開が

導き出されるのです。

 

✔  ターゲットを絞ることで売上が少なくなることはない

 

「ターゲットを狭めれば尖りが出るが、対象とする人数が減り、売上が

下がってしまうのではないか」という疑問をよく聞きます。

 

例えば、コーヒー店が「静かな空間でくつろぎながら、本格的な美味しい

コーヒーを飲みたい」をターゲットとした場合、わいわい話したい学生や

ファミリー層が来なくなって、売上が減少するでしょうか。

むしろ、うるさい空間が嫌だと思っていた人のニーズを掘り起こすことで、

お客さんが増えて売上も増える可能性があります。

つまり、ターゲットを絞っても売上が下がることはないのです。

 

・売上を確保するための戦略的ターゲット

 

それでも、「ターゲットを絞ったら売上不振になるのでは」という不安が

あったとします。そんなとき「売れないのはそもそもマーケティング戦略が

悪いからだ。ブランドは悪くない」というわけにはいきません。

「買ってくれる=ブランドが評価された」ということを理解しなくては

なりません。

売れてこそ成功、ということです。

 

「ターゲットを絞ることで、そのターゲットの対象にならない人が購入

しなくなる」という不安を払拭しなければならないのです。

そこでポイントとなるのが、84ページで説明した「ブランドのターゲット」

(ブランドのイメージする象徴的なターゲット)に加えて、「売上を確保

していくためのターゲット」を見ることです。

これを戦略的ターゲットといいます。

 

戦略的ターゲットとは、言い換えると「売上の最大限確保を可能にする

顧客層」です。

 

スーパーの場合、生鮮食品を買いに来る主婦もいれば、お酒を買いに来る

おじいちゃんや、閉店近くにお惣菜を買う独身のビジネスパーソンもいる

でしょう。

周辺に競合のスーパーがあるなら、近辺にどんな人がどれくらい住んで

いるかということも考える必要があります。

ターゲットを考える上では、この「売上を最大限確保するための戦略的

ターゲット」と、「ブランドのイメージする象徴的なターゲット」(ブ

ランドのターゲット)とを分けて考えることが大事です。

 

・ターゲットはどこまで絞ればよいのか

 

ブランドのターゲットは狭めれば狭めるほど、より特徴のあるブランドに

なり、よりこだわりの強い客に刺さるのですが、ターゲットを絞りすぎると、

ビジネスとして成り立つかが微妙になってきます。

 

一方、ターゲットを広げると、対象顧客は増えるように見えますが、広げるに

つれて尖りがなくなってしまいます。また、競合ブランドとも戦う領域に

入ってきてしまうので、緩めながら尖らせ、そしてまた絞ると言う、柔軟な

発想が必要になるでしょう。

その絞り具合は、ブランド担当者の腕の見せどころと言えるでしょう。

 

絞り具合を調節したいときには、「ターゲットが理想とする象徴的な人」を

設定することで、よりお互いが明確になります。

これを、シンボリックターゲットと言います。

 

ブランドのターゲットを絞りすぎたと感じたときは、「ターゲットが憧れる人や

目指す人はどんな人なのか」という風に、理想となる象徴的な人を考えながら、

両方のターゲットの距離感を考えて議論するのが良いでしょう。

客層を広めたい場合も、緩めるとぼやけるので、ターゲット層をより細かく

切り分けることで、明確に焦点を合わせることができます。

 

 

この続きは、次回に。

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