お問い合せ

書籍「すごい物流戦略」② ニトリ

・ 空極のOJT「配転教育」

 

「本部に5年もいると、現場で目(ま)の当たりにするお客様の立場では

なく、本部の立場、ニトリの立場でしかものを考えられなくなってしま

います。それではどんな優秀な人でも化石になって動けなくなってしまう。

5年一昔と言いますから、5年もすれば企業も成長しているはずだし、事務

機器もコンピュータも新しいものに変わっていますよね。だからいったん

現場に戻って、もう1回、勉強し直してもらわないといけないのです」

(似鳥会長)

 

本部と現場とで全く話が通じない—。こういう事態はなんとかして避け

なければいけません。現場の言うことを理解できず、本部の立場でしか

ものを考えられなくなった人には、一度、現場に戻ってもらい、これほど

現場は変わっていたのか、ということを勉強し直したほうがいいという

ことになります。

だからニトリグループでは、本部と現場の人の異動に関しては、「本部に

戻る」という言い方はしていません。

「現場に戻る」という言い方をしているのです。

ニトリの場合、本部には、むしろ「出向する」といった感覚が正しいの

かもしれません。

「現場に戻って1年経って、また本部に来て、長くても5〜6年いたら、

また現場に戻ります。そうやってどんな人も、本部を2〜3回経験します。

優秀な人ほど早く動きます。優秀でない人はその分、動きが遅くなります」

この配転教育の狙いは、多くの業務・職種を短期間に経験してもらい、

物事を多面的に考え実行できる「スペシャリスト」を育成することに

あります。

「小売業の基本は現場にあり」。

この考えに基づいたニトリグループの「配転教育」は、現場の仕事を重視

する空極のOJTと言えるのではないでしょうか。

 

・独自のSPAモデル「製造物流小売業」

 

ニトリといえば、「お、ねだん以上。」

同社では、「お、ねだん以上。」の商品を作り出すために、次の3つに

こだわっています。

 

(1) 安さ:買いやすい価格であること

 

(2) 品質・機能:使用用途に見合った適正な品質・機能であること。

 

(3) コーディネーション:同じ生活シーンで使うものが揃っていること。

      それらの商品がスタイルと色でつながっていること。

 

ニトリグループでは、独自のSPAモデル「製造物流小売業」を確立し、

お客様の暮らし向上商品を提供してきました。

製造物流小売業というのは、商品企画から製造・物流・販売までを一貫

して、自社でプロデュースするビジネスモデル。

SPAといえば「ユニクロ」や「GU」を展開するファーストリティリング、

「無印良品」の良品計画などが有名ですが、ニトリのように、物流機能

まで自社で行っている例はほかには見当たりません。

また、基幹システムをはじめとしたグループ内で稼働するITシステムも、

社内で独自開発したものです。

メンテナンスについても、自社内でスピード対応しています。

ニトリが扱う商品の多くは、店舗からそのまま持ち帰ることができない

ような大型の家具やインテリア雑貨。

店舗で代金を精算すれば、そのままお客様が利用できるという商品では

ありません。お客様の自宅まで届け、ものによっては設置して初めて、

使えるようになるものです。

つまり、物流(=商品の配送)なくしては成立しないと考えられるビジネス

です。

ニトリが生み出した「製造物流小売業」は、同社ならではの「お、ねだん

以上。」を生み出し仕組みと言えるでしょう。

それでは、この製造物流小売業モデルを構成する個々の機能について見て

いきましょう。

 

1) 市場調査・商品企画

 

ニトリでは「お客様視点」のものづくりが大原則。「使う・買う」人の

立場に立って、商品を調査分析しています。お客様になる快適な生活とは

何かを徹底的に考え、「お、ねだん以上。」の商品を開発します。

 

2) 商品開発

 

色・柄・スタイルが統一された商品をゼロから開発し、コーディネートが

気軽にできる新たなライフスタイルを提案しています。

毎年約1400人が参加する海外研修は、現地のトレンドやデザインを学ぶ

場としても機能しています。

 

3) 原材料調達

 

原材料の仕入れについては、国内・海外(ヨーロッパ、ニュージーランド、

チリ、ASEA諸国など)からあらゆる産地情報を集め、現地に足を運び、

供給元を日々、探し求めています。なかにはベッドに使用するウレタン、

コイルなどのように、部品の素材の開発から関わることもあります。

 

4) 製造

 

商品の製造から生産まで、すべて自社で指導・管理しています。

商品の約90%が海外生産品(開発輸入品:プライベートブランド)になりますが、

ニトリならではの仕組みにより、安定した品質の商品がつくりあげられて

います。

一般に国産の家具は職人の細かな技術に依存した部品により組み立てら

れています。しかしニトリの海外製造の現場では、そうした職人の技術に

頼らずに品質の高い家具をつくりあげるため、機械的につくられるように

した部品の金型的なものができあがっており、どの工場で製造、組立を

行っても、品質面で問題が生じないような仕組みが整えられています。

 

5) 品質検査

 

あらゆる角度から安全性や品質を評価し、厳しい基準に合格した商品だけが

店頭に並びます。独自の品質基準を設け、日々、品質の改善・改革に取り

組んでいます。

品質検査は、協力工場でも、自社工場と同じような基準・体制で行って

います。

 

6) 輸入・物流

 

商品の輸入からお客様の手元への配達まで、全て自前の独自の物流網を

構築しています。ITやロボットなど、最新のシステムを導入し、作業の

効率化とコスト削減を図っています。

自社通関システムを構築してコスト削減をしています。

 

7) 販売

 

「お、ねだん以上。」の商品を提供することが大前提。

実店舗でもネットショップでも、お客様が気軽に買い物ができる環境

づくりをめざしています。

 

8) コールセンター

 

顧客満足度向上を目指し、お客様の意見を参考に業務改善に取り組み、

よりよい商品とサービスを提供するために、関係部署への迅速なフィード

バックを行なっています。

 

ニトリでは、こうした機能を持つ部門(各会社)が「お、ねだん以上。」の

実現・維持に向けて、日々取り組みを続け、「開発—製造—物流—小売—

アフターサービス」の5つのステップを横断的に進め、ニトリの横断型

PDCAとして回しています。

 

 

 

この続きは、次回に。

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