書籍「すごい物流戦略」オムニチャネルと物流戦略②
● オムニチャネルに至るまでの「3つの進化」
さて、ここで時代を少しさかのぼって、買い物環境の進化を振り返って
みましょう。
そうすることで、オムニチャネルへの対応が必須のものであることがよく
理解できるはずです。
インターネットが普及する以前(といっても、今からほんの20年くらい前の
ことですが)の買い物といえば、直接、リアル店舗に買いに出かけること
でした。
もちろんその当時も、テレビショッピングやカタログ通販といった通信
販売もありましたが、圧倒的に買い物できる機会(取り扱い商品や品質
など)が限られていました。
商品の情報は店で直接聞くか、雑誌や新聞、テレビ・ラジオの広告が頼り。
正確な商品情報を手に入れるのにも時間がかかりました。
現在では当たり前の、商品価格の比較も、専業主婦の方が複数のスーパーの
チラシ広告を並べて「特売品はどこがお得か」をざっとチェックする程度。
もちろん店舗にはきっちり営業時間も休業日もありますから、「これが
欲しい!」と思ったときに「すぐ購入」というわけにはいかず、そのうえ、
店舗に在庫がなければ、いつ商品が手に入るのかもはっきりしないと
いうことが一般的でした。
実際のところ、それで我慢するか、納得できなければ商品を購入できな
かったわけです。今から思えば、実は制約の多い時代でした。
自由に買い物を楽しめる現在のオムニチャネルに対し、「シングルチャ
ネル」と呼びます。
やがて2003〜2004年ごろにネット通販が一般的になってくると、「リアル
店舗に行くか、ネットショップにするか」という選択肢が生まれてきます。
インターネットを利用すれば、最新の商品情報を知ることもでき、店舗
ごとの価格比較も簡単になりました。
さらに、IT技術の進歩によって、ネット通販にインターフェースにPCの
ほか、スマートフォン、タブレット型端末、インターネットに接続可能な
テレビなどが加わり、電話やファックスといったアナログの注文方法に、
リアル店舗を含む「マルチチャネル」と呼ばれる買い物環境が生まれ
ました。しかし、マルチチャネルといっても、商品の購入・注文方法が
多様化しただけで、商品の受け取り方法については、店舗購入の場合は
「持ち帰り」、ネット通販なら「宅配便」という決まった方法以外に、
お客さん側の選択肢はありません。
シングルチャネルより便利になったことは確かですが、マルチチャネルと
いっても、それは商品を販売する側から見たマルチであって、お客さん
からすれば、選べるお店が少し増えたという程度だったと思います。
マルチチャネルの次に進化が「クロスチャネル」です。
「知る」「調べる」「買う」「受け取る」という買い物行動に応じて、
リアル店舗、電話、PC、スマートフォン、タブレット端末、テレビ、
スマートフォンなどを使い分けられる買い物環境も整い始めました。
店舗で商品を見かけ、スマホから注文、自宅で受け取る。
スマホで商品情報を確認し、リアル店舗で購入する。
テレビCMで商品を見て、パソコンから注文、店舗に出かけて商品を
受け取る——こうした買い物プロセスのように、チャネル間を移動
することから、「クロスチャネル」と呼ばれています。
そして、クロスチャネルの次に来るのが「オムニチャネル」です。
クロスチャネルでは「お客さんが意識してチャネルを使い分ける」という
感覚でしたが、オムニチャネルの場合は「自由にチャネル間を行き来し、
余分なストレスを感じることなく、希望するタイミング・場所で商品を
受け取る」のが、当たり前のこととしてできるようになります。
テレビでも、タブレットでも、スマホでも、リアル店舗でも、在庫の確認や
同じ価格での注文ができ、自宅でも職場でも、リアル店舗でも、あるいは
別の便利な場所(例えば最寄りのコンビニや駅施設など)で商品を受け取る
ことが可能です。
こうしたことを実現するためには、どのチャネルでも商品情報が同じで、
在庫情報と連動している、どこで購入しても顧客の購入履歴としてまとめ
られる、といったことが必要になります。
この続きは、次回に。