お問い合せ

現代語訳「論語と算盤」③

□ 今、なぜ現代語訳か?

 

さて、本書はそんな『論語と算盤』のなかから重要部分を選び、現代語に

訳したものだ。栄一は、本書のなかで、次のように語っている。

 

「(『論語』を小難しくとらえようとする学者は)口やかましい玄関番の

ようなもので、孔子には邪魔ものなのだ。こんな玄関番を頼んでみても、

孔子に面会することはできない」

 

この指摘を借りていえば、本書が目指したのも、渋沢栄一家のよき玄関番に

外ならない。昨今は、漢文調の文章を読み辛いと感じる人が増え、栄一と

いう近代屈指の偉人と出会いにくくなってしまった。

だからこそ、中学生でも気軽に会いに行けるような、そんな玄関番になって、

栄一の魅力をぜひ多くの人に知って欲しいと考えたのだ。

どの程度その試みが成功しているかは、読者からの指摘を待つしかない

のだが、「噛み砕いて訳しすぎ」「超訳になりすぎ」といった批判であれば、

若い人を精一杯の笑顔で栄一に案内しようと努めた玄関番のとして、

甘んじて受けたいと考えている。

最後に、『論語と算盤』という本の成り立ちについて簡単に触れておきたい。

 

本書は渋沢栄一を慕う人々が竜門社という組織を作った。

これが現在の渋沢栄一記念財団の前身となったのが、この竜門社が『竜門

雑誌』という機関紙を発刊、栄一の講演の口述筆記を次々と掲載していった。

そのなかから、編集者であり実用書の著者でもあった梶山彬が、九十項目を

選んでテーマ別に編集したのが本書でなる。

大正五(一九六)年に東亜堂書房から発行され、以後、国書刊行会や角川

学芸出版から再刊されてもいる。

 

渋沢栄一のことばを編んだ本はこれまでに何種類も出されてきたが、この

『論語と算盤』は、彼の自叙伝である『雨夜譚』(岩波文庫)と並んで、

もっとも読みごたえのある入門書といってよいだろう。

なお、本書の記述の中で、年代に関して栄一の明らかな記憶違いであろうと

いうものに関しては、訂正を施してある。

最後に、本書の刊行にあたっては、企画を快諾して頂いた筑摩書房の増田

健史新書編集長、そして編集担当の小船井健一郎氏、さらには渋沢栄一

記念財団の方々—-特に、井上潤渋沢資料館館長と、渋澤健コモンズ投信

会長に多大なる御指導と御助力を頂いた、深甚なる謝意を捧げたい。

 

● 咎

1. 人から責められたり非難されたりするような行為。あやまち。

    しくじり。「失敗は彼の―ではない」

2. 罰されるべき行為。罪。「盗みの―で捕らえられる」

3. 非難されるような欠点。

 

● 雨夜譚

激動の幕末維新を背景に大実業家・渋沢栄一(1840―1931)が疾風怒濤の

青春を語る自伝.尊攘倒幕の志士→徳川家家臣→明治政府官僚→在野実業家と

転身を重ねる著者の生き方は鋭い現実主義に貫かれた魅力をもち,維新

変革をなしとげたエネルギーが生きいきと伝わってくる.

実業家時代を概観した「維新以後における経済界の発達」併収.

 

● 深甚(しんじん)

意味や気持ちなどが非常に深いこと。また、そのさま。甚深。

「深甚な(の)謝意を表する」

 

 

この続きは、次回に。

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