お問い合せ

現代語訳「論語と算盤」④

第1章 処世と信条

 

□ 『論語』とソロバンは、はなはだ遠くて近いもの

 

弟子たちが孔子のことについて書いた『論語』という書物がある。

ここには今、われわれが道徳の手本とすべき最も重要な教えが載っている。

たいていの人は、『論語』くらい読んだことがあるだろう。

私はこれに、ソロバンというとても不釣り合いで、かけ離れたものをかけ

合わせて、いつもこう説いている。

 

「ソロバンは『論語』によってできている。『論語』もまた、ソロバンの

働きによって、本当の経済活動と結びついてくる。だからこそ『論語』と

ソロバンは、とてもかけ離れているように見えて、実はとても近いもので

ある」

 

わたしは常々、モノの豊かさとは、大きな欲望を抱いて経済活動を行なって

やろうというくらいの気概がなければ、進展していかないモノだと考えて

いる。

空虚な理論に走ったり、中身のない繁栄をよしとするような国民では、

本当の成長とは無関係に終わってしまうのだ。

だからこそ、政界や軍部が大きな顔をしないで、実業界がなるべく力を

持つようにしたいとわれわれは希望している。実業とは、多くの人に、

モノが行きわたるようにするなりわいなのだ。これが完全でないと国の

富は形にならない。

国の富をなす根源は何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい

素性の富なのだ。そうでなければ、その富は完全に永続することができない。

ここにおいて『論語』とソロバンというかけ離れたものを一致させることが、

今日の急務だと自分は考えているのである。

 

● 「孔子」

 前五五二〜前四七九 名は丘(きゅう)。子は先生の意。

 思想家・教育者として活躍。

 

● 「論語」

 孔子とその弟子たちの言行を、孫弟子や曽孫弟子がまとめたもの。

 孔子自身は書いていない。

 

● 「言行(げんこう)」

 言葉と行い。口で言うことと実際に行うこと。

 「言行が一致しない」

 

 

この続きは、次回に。

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