お問い合せ

現代語訳「論語と算盤」⑩

□ 立派な人間が、真価を試される機会

 

逆境に立たされる人は、ぜひともその生じる原因を探り、それが「人の

作った逆境」であるのか、それともその生じる原因を探り、それが「人には

どうしようもない逆境」であるのかを区別すべきである。

その後、どう対処するのかの策を立てなければならない。

このうち「人にはどうしようもない逆境」とは、立派な人間が真価を試される

機会に外ならない。では「人にはどうしようもない逆境」に立たされた場合、

その逆境にどう対処すべきなのかというと、わたしは神様ではないので、

それに対する特別な秘訣を持っているわけではない。また恐らく社会にも、

そういう秘訣を知った人はいないだろうと思う。しかし、わたし自身が

逆境に立たされたとき、自分でいろいろと試し、また正しい道筋なのかと

言う観点から考えてみたことがある。

その内容をここで明らかにしてしまうと、それは逆境に立たされた場合、

どんな人でもまず、「自己の本分(自分に与えられた社会のなかでの役より

分担)」だと覚悟を決めるのが唯一の策ではないか、ということなのだ。

現状に満足することを知って、自分の守備範囲を守り、「どんなに頭を

悩ませても結局、天命(神から与えられた運命)であるから仕方がない」と

あきらめがつくならば、どんなに対処しがたい逆境にいても、心は平静さを

保つことができるに違いない。ところがもし、「このような状況はすべて

人のつくり上げたものだ」と解釈し、人間の力でどうにかなるものであると

考えるならば、無駄に苦労の種を増やすばかりでなく、いくら苦労しても

何も達成できない結果となる。最後には逆行のなかで疲れ切って、明日を

どうするかさえ考えられなくなってしまうだろう。だからこそ、「人には

どうしようもない逆境」に対処する場合には、天命に身をゆだね、腰を

すえて来るべき運命を持ちながら、コツコツと挫けず勉強するのがよい

のだ。

これとは逆に、「人の作った逆境」に陥ったらどうすればよいのだろう。

これはほとんど自分がやったことの結果なので、とにかく自分を反省して

悪い点を改めるしかない。世の中のことは、自分次第な面も多く、自分から

「こうしたい、ああしたい」と本気で頑張れば、だいたいはその思いの

通りになるものである。ところが多くの人は、自分で幸福な運命を招こうとは

しないで、かえって最初から自分でねじけた人となってしまい、逆境を

招くようなことをしてしまう。それでは順境に立ちたい、幸福な生涯を

送りたいと思っても、それを手に入れられるはずがないのではないか。

 

● 逆境

 

苦労多い境遇。 不運な境遇。

 

● 真価

 

本当の値うち。物や人のもつ真の価値や能力。

「真価が問われる」「真価を発揮する」

 

● 天命

 

1. 天の命令。天が人間に与えた使命。「人事を尽くして天命を待つ」

2. 人の力で変えることのできない運命。宿命。

3. 天の定めた寿命。天寿。「天命を全うする」「天命が尽きる」

4. 天の与える罰。天罰。

 

● 順境

 

物事が都合よく運んでいる境遇。

 

 

 

この続きは、次回に。

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