お問い合せ

現代語訳「論語と算盤」㉜

□ よく集めて、よく使おう

 

お金は、現実に世界で通用する貨幣の通称である。

そしてそれは、いろいろな物品の代表者でもある。

貨幣がなぜ便利なのか、というと、どんなモノにも変わることができる

からである。大昔は物々交換をしていたが、今は貨幣さえあれば、どんな

ものでも心のままに買うことができる。

この「いろいろなものを代表できる」という価値を持っているところが

貴重なのだ。だから、貨幣の第一の条件としては、貨幣そのものの価値と、

物品の値段が等しくなければならない。もし名目だけ一緒でも、貨幣の方の

価値が減ってしまうと、物価が上がってしまう。

また、貨幣は分けるにも便利である。

さらに貨幣は、モノの価格を決めることができる。

一般的に、お金は大切にしなければならない。これは若い人たちだけに

望むのではない。老人も中高年も、男女も、すべての人が大切にすべき

なのだ。

前にもいったように、貨幣はモノを代表することができるのだから、モノと

同じく大切にすべきなのだ。

昔、中国の偉大な王様だったは、些細なものでも粗末にしなかったことで

知られていた。また、宋の時代の朱子という思想家は、「一杯のご飯でも、

これを作るのにいかに苦労を重ねてきたのか知らなければならない。

紙切れや糸くずでも、簡単にできたわけではないことを理解せよ」と

述べている。

 

省略—

 

また、お金は社会の力をあらわすための大切な道具でもある。

お金を大切にするのはもちろん正しいことだが、必要な場合に上手く

使っていくのも、それに劣らず良いことなのだ。よく集めて、よく使い、

社会を活発にして、経済活動の成長をうながすことを、心ある人はぜひ

とも心がけて欲しい。お金の本質を本当に知っている人なら、よく集める

一方で、よく使っていくべきなのだ。

よく使うとは、正しく支出することであって、よい事柄に使っていくことを

意味する。よい医者が大手術で使い、患者の一命を救った「メス」も、

狂人に持たせてしまえば、人を傷つける道具になる。

これと同じで、われわれはお金を大切にして、よい事柄に使っていくことを

忘れてはならない。

お金とは大切にすべきものであり、同時に軽蔑すべきものでもある。

ではどうすれば大切にすべきものとなるのか。それを決めるのはすべて

所有者の人格によるのである。ところが世間は、大切にするという意味を

間違って解釈し、ひたすらケチに徹してしまう人がいる。これは本当に

注意すべきことだ。

お金に対して、無駄に使うのは戒めなければならない。しかし同時に、

ケチになることも注意しなければならない。よく集めることを知って、

よく使うことを知らないと、最後には守銭奴になってしまう。

今の若い人たちは、金づかいの荒い人間にならないよう努力すると同時に、

守銭奴にならないよう注意すべきなのである。

 

● 禹(う)

 

夏王朝を創始したといわれる伝説の聖王。

聖王とは、徳のすぐれた君主。聖主。

 

● 朱子

 

一一三○〜一二○○ 本名は朱熹(しゅき)。南宋時代の思想家で、

宋代に盛んになった新しい儒学の流れを集大成して朱子学を

興した。江戸幕府で採用されたのもこの考え方。

 

● 守銭奴

 

金をため込むことばかりに執心する、けちな人。

 

 

 

この続きは、次回に。

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