実践するドラッカー[思考編] ㉖
A lesson from P.F.Drucker
∵ 強みはかけがえのない資産
指紋のように自らに固有の強みを発揮しなければ成果をあげることはでき
ない。なすべきは自らが持っているものを使って成果をあげることである。
『非営利組織の経営』—p.216
世に同じ指紋をもつ人が存在しないように、個人の強みもそれぞれの人に
固有のものです。強みは一種類ではなく、その組み合わせを考えると、
膨大な数にのぼります。しかし案外、自らの強みには気づいていないもの
です。
強みとは、個々人がもっている資質を磨いたものです。
よく勘違いされますが、得意分野のことではありません。
例えば、「慎重さ」という資質に磨きをかけると、仕事の準備や段取りに
強みを発揮できるようになります。連絡漏れはないか、企画に穴はないか、
契約書に間違いはないかなど、他の人が気づかない点に気が回るように
なるわけです。
さらにその強みを磨き上げると、例えば、プロジェクトの実行責任者と
して大きな成果を上げるようになります。
強みは、成長とともに日々変化していくものです。
資質は、磨かなければ、もっていないも同然です。逆に、資質を真剣に
磨いて強みとすれば、それはかけがえのない個人の財産となります。
資産をフルに活用して、組織に、ひいては社会に貢献できるよう、日々
務めていきましょう。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 強みを正しく知るには
誰でも自分の強みはわかっていると思う。たいていが間違いである。
知っているのは、強みというよりも強みならざるものである。
それでさえ間違いのことが多い。
『明日を支配にするもの』—p.194
自らの強みを正しく知ることは、簡単そうでいて、実は非常に難しいもの
です。それには、理由があります。
第一に、強みの本質を知らないからです。
強みは資質に起因するもので、例えば、慎重さ、未来を予見すること、
人の成長を手助けできることなどの資質の延長線上にあります。
英語が得意といったことは、ここでいう強みではありません。
英語の知識だけでは、仕事の成果につながらないからです。
第二に、長所や強みを日頃意識していないからです。
目に見えないものである以上、よほど注意していないと、きちんととら
えることができません。
だからこそ、ドラッカー教授は「書きとめておくこと」を奨励しています。
第三に、強みを、仕事とその成果との関係でとらえていないからです。
仕事で成果が上がらなければ、強みを生かしているとはいえません。
何はともあれ、真の強みを知ることに全力で取り組むことから始めましょう。
そこから、すべての道が開けます。そして、常に強みと成果を関連づけて
考える癖をつけましょう。
● 資質
「資質」とは、生まれつき備わっている天性の才能のことを表した言葉
です。熟語に用いられている「資」という文字は、「資源」「資本」と
いう熟語からもわかるように、「もとで」「もちまえ」という意味合いが
あります。2020/05/31
● 起因
ある事の起こる原因となること。「機械の未整備に―する事故」
この続きは、次回に。