「人を動かす人」になれ! ㊹
48.「三倍の法則」が女性を動かす
女性の部下を多数抱えている管理者は、わたしがよく話して聞かせるのが
「三倍の法則」である。女性に指示を出したり、注意を与える。
あるいは、何か訴えごとを聞くような場合には、男の三倍の時間をかけ
るようにいっている。
たとえば注意を与える場合でも、まず褒めることから入る。
以前にできなかった仕事ができるようになった。
仕事のペースがごくわずかでも速くなった、電話の対応がスムーズに
なってきた、言葉づかいが社会人らしくなってきたなど、褒めちぎって
おいてから本論に入る。注意するときも決してストレートにはいわない。
相手の感情を刺激しないように、遠回しに穏やかな言葉を選んで、
「このようにした方が、もっとよくなる」といった表現を使う。
そして最後にもう一度褒めてしめくくる。
つまり、一つ注意するのに五つぐらいは褒める。
これは、すべてマンツーマンでやる。
女性の場合はみんなのいる前、特に何人かの女性のいるところで、
一人だけ褒めると嫉妬の対象となることがあるからである。
少し極端な言い方をすると、何でもない言葉をかけるのも平等にしないと
いけない。特に注意を与えるときには一対一で、というのが鉄則だ。
わが社では、管理者にここまで徹底させている。
理由は、女性を戦力としてじっくりと育てていきたいと考えているからだ。
採用時には「結婚後も、ずっと勤めてもらうのは大歓迎。
わが社には結婚したから辞めないといけないという理由は何もない」とも
いっている。また、待遇面でも平等だし、社員研修会への出席も男女の
区別はない。資格が同じであれば、同じ内容の研修を受けてもらう。
女性を大切にするのは、わが社の製品と大いに関係がある。
たとえばわが社の主力製品であるハードディスクドライブ(HDD)用スピン
ドルモータは、コンピューターのハードディスク装置を正確に機能させる
ために、数ギガ〜数十ギガバイト(二ギガバイトで新聞一○年分以上の
情報量を記憶できる)の情報が書き込まれたHDD内部のディスクを一分間に
三六○○〜一万回転の速さで回転させる。
そのディスク面上○.○二〜○.○四ミクロンの間隔で読み取りヘッドが動いて
いるため、ほんのわずかな回転制度の誤差も許されない。
こうしたデリケートな製品をつくっている職場には、女性特有のきめ
細かさや、緻密さ、丁寧さなどが不可欠である。
したがって男女の別なく女性社員を動かせるリーダーへの期待も今後
ますます高まってくる。
この続きは、次回に。