「人を動かす人」になれ! ㊺
49.マナー、礼儀作法を知らない社員は使い物にならない
新入社員研修のなかにマナー講習を取り入れている企業は珍しくない。
だが、わが社ではその後段階的に実施する階層別集合研修にも、必ず
マナー講習を行っている。これは女性社員だけを対象にしているわけでは
ないが、結婚して家庭に入った女性社員たちから、非常に喜ばれ、感謝
されている。
そのマナー講習は、名刺の受け渡しや電話応対の仕方といったビジネス
マナーだけにとどまらず、社会人として日常生活を送っていくうえで必要な
礼儀作法から、冠婚葬祭のあらゆる知識まで広範囲に及ぶ。
手紙の書き方、のし袋の表書きの常識、ふくさの包み方、出し方、お祝い
にはどんなものを持っていくと喜ばれるのかといったことから、テーブル
マナー、焼香のやり方、近所とのつき合い方まで会社で教える。
それも中途半端にはやらない。
たとえば、お茶の出し方一つでも、お盆の持ち方やその位置と歩き方、
応接室のノックの仕方、ドアを開けて部屋へ入り、ドアを閉めるまでの
一連の動き、その間のお辞儀の仕方やタイミング、お盆をサイドテーブルに
置くときの位置や姿勢、そして茶器を持ってお客様の席までの移動の仕方、
お茶を置く位置と声のかけ方、それから退室するまでの一連の動作、さらに
次の飲み物を出すタイミングのはかり方—–。こうしたことは本来家庭で
躾けるべきだとは思うが、わが社ではここまで徹底して指導している。
なぜならマナー、礼儀作法すら満足に身につけていない社員に、会社の
規則やルールはこうなっている。経営ポリシーや経営方針はこうだ、などと
いってみても、結局は徒労に終わってしまうというわたしの考えからである。
一流企業、優良企業というのは、決して売上や利益が高いことだけでは
ないはずだ。社内の行き届いた清掃と整理整頓。アポイントの時間が厳守
され、訪問者を五分たりとも待たせるようなことはしない、させない社風。
そして受付での対応にはじまり、廊下ですれ違う社員の動き、言葉づかい、
身だしなみ—-。たとえ工場や品質をチェックしなくても、もうこれだけで
この会社の製品が充分信頼に足るものであることがわかる。
女性社員は男性社員に比べて、このあたりには、はるかに敏感に反応する。
特に女性社員に一流企業、優良企業に勤めているという誇りとプライドを
持ってもらうために、わが社ではマナー講習には特に力を入れている。
● 徒労
むだな骨折り。無益な苦労。
「せっかくの努力が―に帰す」「―に終わる」
この続きは、次回に。