ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」⑰
□ 働く者を取り巻く組織の現実
しかし、組織に働く者の置かれている状況は、成果をあげることを要求
しながら、成果をあげることをきわめて困難にしている。まさに自らが
成果をあげるよう意識して努力しないかぎり、まわりを取り巻く現実が
彼らを無価値にする。
組織に属していない知識労働者の現実を見てみれば、問題が見えてくる。
例えば医者は、成果をあげることについて大体において問題がない。
診察室に来る患者は、医師の知識が成果をあげるうえで必要なものすべてを
もって来る。そして患者を診ている間、医者は患者に専念できる。
仕事が中断されることを最小限に抑えることができる。
医者がなすべき貢献も明らかである。重要なことと重要でないことは、
患者を悩ます病気によって決定される。しかも患者の訴えが医者の仕事の
手順を決定する。仕事の目的や目標も与えられている。
それは患者の健康を回復すること、もしくは少なくとも苦痛を和らげて
やることである。
医者は自らの態勢を整え仕事を組織化する能力において、特に優れている
わけではない。しかし成果をあげることに大きな困難を感じる者はほとんど
いない。
ところが組織の中のエクゼクティブはまったく違う状況に置かれている。
通常、彼らは自分ではコントロールできない四つの大きな現実に囲まれて
いる。それらの現実は、いずれも組織に組み込まれ日常の仕事に組み込ま
れている。彼らにとっては、それらのものと共生するしか選択の余地は
ない。しかも四つの現実のいずれもが、仕事の成果をあげ業績をあげる
ことを妨げようと圧力を加えてくる。
この続きは、次回に。