お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㉟

□ 時間浪費の原因を整理する

 

時間の使い方を自己診断するためのこれら三つの方法は、自らがコント

ロールしうる非生産的な仕事に関するものであるすべての知識労働者が

常にこれらの問いを自らに発していかなければならない。

ところがこれらの時間の浪費以外に、マネジメントと組織構造の間違いに

起因する時間の浪費がある。それらの間違いはあらゆる人の時間を浪費

する。

 

まず第一に、システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費がある。

ここにおいて発見すべき兆候は、周期的な混乱、繰り返される混乱である。

二度起こった混乱を、三度起こしてはならない。

 

毎年起こる在庫管理の混乱はこのたぐいである。膨大なコストをかけ、

かつコンピュータの力によってこの混乱にみごとに対処できるように

なったことは進歩とはいえない。

 

繰り返し起こる混乱は予知できる。したがって、予防するか、事務的に

処理できる日常の仕事にルーティン化しなければならない。

ルーティン化とは、判断力のない未熟練の人でも天才を必要とする仕事を

処理できるようにすることである。

経験から学んだことを体系的かつ段階的なプロセスにまとめることである。

繰り返される混乱は、組織の下のほうばかりで起きるのではない。

あらゆるレベルで起こる。

 

ある大企業が毎年一二月に入ると混乱に陥っていた。季節変動の大きな

業績であって毎年最終四半期には売り上げと収益が落ち込んでいた。

しかもどれだけ落ち込むかの予測が困難だった。

にもかかわらず第2四半期末に出す中間報告では、最終四半期の収益を

予測していた。そのため毎年、最終四半期では、その予測に合わせるべく

急遽全社的なキャンペーンを実施していた。

こうして三週間から五週間は誰も仕事ができなくなっていた。

だが、そのような年末の混乱を解消するにはごく簡単な工夫で十分だった。

最終四半期については、一つの数字を出す代わりに幅を示すことにした

のである。取締役会、株主、金融機関も理解した。

こうして、恒例の数字合わせも今では誰も気にしないようになった。

しかもトップマネジメントが時間を浪費しなくてすむようになった結果、

業績が改善された。

アメリカ国防総省では、毎年春、年度末の六月三○日を控えて、これと

同じような最後の瞬間の危機と呼ぶべきものが全組織を襲っていた。

五、六月になると、予算の返戻を恐れてその消化に駆けずり回っていた。

この騒ぎは新任の長官マクナマラがすぐ気づいたように不要だった。

支出の繰り延べはもともと認められていた。

 

繰り返し起こる混乱はずさんさと怠慢の兆候である。

 

コンサルタントの仕事を始めたばかりの頃、私は製造についての知識が

なく、よくマネジメントされた工場とそうでない工場を見分けられなかった。

だがすぐに、マネジメントが行き届いた工場は静かであることに気づいた。

逆に産業の叙事詩ともいうべき騒然とした工場は、マネジメントされて

ないことを知った。

そのため劇的なことは何も起こらない。

よくマネジメントされた組織は、日常はむしろ退屈な組織である。

そのような組織では、真に劇的なことは、昨日の尻ぬぐいのための空騒ぎ

ではない。それは、明日をつくるための意思決定である。

 

 

この続きは、次回に。

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