ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊸
貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるという
ことである。貢献に焦点を合わせることなくしては、やがて自らをごま
かし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺くことになる。
事実、最もよく見られる人事の失敗は、新たに任命された者が新しい地位の
要求に応えて自ら変化していくことができないことに起因している。
それまで成功してきたことと同じ貢献を続けていたのでは失敗する運命に
ある。貢献すべき成果そのものが変化するだけでなく、前述した三つの
領域の間の相対的な重要度さえ変化するからである。
このことを理解せずに、以前の仕事では正しかった仕事の仕方をそのまま
続けるならば、新しい仕事では、間違った仕事を間違った方法で行うことに
なる。
第二次世界大戦中に、ワシントンに集められた有能な民間企業人の多くが
失敗した原因もここにあった。ワシントンが政治的な場所であるとか、
それまでは独立して仕事をしていたということは、せいぜい二義的な原因に
すぎなかった。政治的な感覚がなくとも、あるいは二人以下の弁護士
事務所でしか働いたことがなくとも、連邦政府において立派に成果を
あげた者は大勢いた。例えばロバート・E・シャーウッドは、巨大な戦時
情報局の部長として大きな成果をあげた。劇作家として彼がそれ以前に
経験したことのある組織は、机とタイプライターと自分だけだった。
戦時中に連邦政府で成功した人たちはみな貢献に焦点を合わせていた。
その結果、仕事の内容とともに価値の相対的な比重まで変えることが
できた。失敗した人たちのほうが、よく働いていたという例も多い。
しかし彼らは自分に挑戦しなかった。努力の方向を変える必要に気づかな
かった。
この続きは、次回に。