ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊻
□ 専門家に成果をあげさせるには
知識労働者が貢献に焦点を合わせることは必須である。
貢献に焦点を合わせることなくして貢献する術はない。
知識労働者が生産するものは物ではなく、アイデア、情報、コンセプトで
ある。知識労働者は、ほとんどが専門家である。彼らの一つのことだけを
よく行うとき、すなわち専門化したとき大きな成果をあげる。
しかし専門知識はそれだけでは断片にすぎず不毛である。
専門家のアウトプットは、他の専門家のアウトプットと統合されて成果と
なる。
必要なことは、専門家自身と彼と彼の専門知識をもっと成果をあげさせる
ことである。言い換えれば、自らの産出物たる断片的なものを生産的な
存在にするために、何を知り、何を理解し、誰に利用してもらうかを考え
させることである。
現代社会では「科学者」と「一般人」に分けることがはやりのようである。
そこで当然、「一般人」に対し、「科学者」の知識や用語や用具について
少々勉強せよとの要求が出てくる。
しかし、万一社会がそのように分けられたとしても、それは一○○年前の
ことである。今日組織に働く人はみな、高度の専門知識をもち独自の用具と
関心と用語をもつ専門家である。
原価計算の担当者も、独自の仮定、関心、用語とともに、独自の専門領域を
もつという意味において、生化学者と同じように「科学者」である。
同じことは、市場調査の専門家、コンピュータの専門家、政府機関の
予算担当官、病院で働く精神病のケースワーカーにもいえる。
彼らはみな、成果をあげるには他人によって理解されなければならない。
この続きは、次回に。