ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+34
□ 劣後順位の決定が重要
明日のための生産的な仕事は、それらに使える時間の量を上回って存在
する。加えて明日のための機会は、それらに取り組める有能な人の数を
上回って存在する。もちろん問題や混乱は十分すぎるほど多い。
したがって、どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が
必要である。唯一の問題は、何がその決定をするかである。
自らが決定するか仕事からの圧力が決定するかである。何が決定するに
せよ、仕事は利用できる時間に合わせて行わざるをえない。
機会はそれを担当する有能な人が存在して初めて実現できる。
圧力に屈したときには重要な仕事が犠牲にされる。特に、仕事のうち最も
時間を使う部分、意思決定を行動に変えるための時間がなくなる。
いかなる仕事も、組織的な行動や姿勢の一部になるまではスタートした
ことにはならない。
いかなる仕事も、誰かが自らの仕事として引き受け、新しいことを行う
必要や新しい方法を行う必要を受け入れなければ始まらない。
いかにプロジェクトとして完結しているかに見えても、それを誰かが自らの
仕事としてルーティン化しなければ完結するにいたらない。
時間がないためにそれらのことが行われない場合には、それまでの仕事や
労力はすべて無駄になる。だが仮にそうなったとしても、それは単に仕事の
優先順位を決定しなかったことの当然の報いである。
状況に流されて優先順位を決定することから予想されるもう一つの結果は、
トップ本来の仕事がまったく行われなくなることである。トップ本来の
仕事は、昨日に由来する危機を解決することではなく今日と違う明日を
つくり出すことであり、それゆえに、常に後回しにしようと思えばできる
仕事である。状況の圧力は常に昨日を優先する。
また、状況の圧力に支配されるトップは、トップ以外の誰にもできない
もう一つの仕事、すなわち組織の外部に注意を払うという仕事をないがしろ
にしてしまう。その結果、唯一の現実であり唯一の成果の場である外部
世界の感触を失うことになる。なぜならば、状況の圧力は常に内部を優先
するからである。
状況からの圧力は、未来よりも過去を、機会よりも危機を、外部よりも
内部を、重大なものよりも切迫したものを優先する。
実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。
優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、
劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の
遵守が至難だからである。
延期とは断念を意味することを誰もが知っている。延期した計画を後日
取り上げることほど好ましからざるものはない。後日取り上げてももはや
タイミングは狂っている。タイミングはあらゆるものの成功にとって最も
重要な要因である。五年前に賢明であったことを今日行っても不調と失敗を
招くにすぎない。
● ルーティン化
「ルーチン化」は業務の流れを機械化、マニュアル化、またはパターン化
することによって効率を上げようとすることを指します。
仕事におけるルーチン化は「習慣化」とも言い換えることができますが、
毎日同じ場所で同じ動作をすることで「社員の気持ちを安定させる」ことも
期待できるでしょう。
● ないがしろ(蔑ろ)
1. あってもないもののように軽んじること。また、そのさま。
「親を―にする」
2. しまりのないさま。だらしのないさま。
「狩衣姿の―にて来ければ」〈源・末摘花〉
● 遵守
法律や道徳・習慣を守り、従うこと。循守。「古い伝統を―する」
● 循守(じゅんしゅ)
「遵守 (じゅんしゅ) 」に同じ。
● 賢明
かしこくて、物事の判断が適切であること。また、そのさま。
「―な処置」「早く報告したほうが―だ」
この続きは、次回に。