P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉓
□ 作業量とは何か
用語の定義および表1の項目には見慣れないものがあるかもしれないが、
考え方自体は理解できるはずである。しかし一つだけ例外がある。
経理からは出てこない数字を必要とする新しい概念、すなわち製品別配分
コストの計算に使ったコストの発生源としての作業量の概念である。
作業量とは何か。そして事業上の多様な作業のうちどれをコストを発生
させるものと決めるか。定型化できる答えはない。
それは経済理論や経理によってではなく、事業上必要とされる活動の内容に
よって決めるべきものである。
多くの場合、送り状の数が作業量の単位としては簡単でありかつ把握
しやすい。多大なコストを要する事務処理が送り状を中心として行われて
いる場合には、送り状の数を製品コストの指標として使うことができる。
しかし、送り状に複数の異なる製品が記載されている場合には、出荷件数が
作業量の客観的な基準となる。
デパートの場合、来店した顧客一人当たりの購買額が指標として知られて
いる。顧客一人当たりの購買額が大きいほど小売りの効率はよい。
したがって逆に作業量の単位としては、来店した顧客の人数を使うことに
なる。
科学計算用のコンピュータメーカーでは、コンピュータ一台の注文にいたる
見積書の数を作業量の客観基準として使っている。膨大な技術的、事務的な
作業を伴う見積書こそ、真のコストセンターであり、最高の技術者という
最も希少かつ最も高価な資源を消費する胃袋である。
アルミメーカーの圧延工場では、熱間圧延(加熱した金属を圧延機で延ばす
工程)の稼働回数が、作業量の単位として適切であることが明らかになって
いる。しかし、同じアルミメーカーでも、自動車用のラジエーターグリルや
冷蔵庫用の取っ手を生産している成型工場では、金型工の労働時間が
作業量の単位として有効であることが明らかになっている。
航空会社にとって、最も重大な意味をもつコストは空席すなわち無為の
コストである。消費財メーカーにとっては、作業量の単位は、例えば
一○○ドルの売上げに必要な問屋への訪問回数である。あるいは一○○ドルの
売上げに必要な問屋の数である。どの問屋へのサービスも同じように
コストがかかる。違いがあるとすれば、コストのかからないのは大口の
問屋のほうである。信用上のリスクが小さく支払いが早いだけでなく、
必要な訪問の回数もサービスも少なくてすむ。
この続きは、次回に。