P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉖
一例を挙げるならば、海運業には三つの種類の大きな作業がある。
第一に、船荷の個数に応じた事務作業がある。船荷の大小、価格の高低、
インボイス(送り状)の記載品目にかかわらず、船荷一個当たりの事務量は
同じである。法の定めるところにより、船荷ごとに所定の様式に書き入れ
処理しなければならない。したがってある運航の船積みに要する事務
コストは、その運航ルートに関わる総事務コストに全船荷に占めるその
回の運航の船荷個数の割合を掛けて計算される。
第二に、船積みのための荷役作業がある。ここでは、コストの単位は船荷の
積み下ろしに要する時間である。積み下ろしする船荷の大小にかかわらず、
船積みネットの時間当たり使用回数は一定である。
その間、船倉や埠頭には荷役が待機している。時間がコストの単位である。
したがってある運航の船積みに要する荷役のコストは、全荷役コストに
全荷役時間に占めるその回の運航に要した荷役時間の割合を掛けて計算
される。すなわち船会社にとっては船荷が大きいほど経済的ということに
なる。
そして第三に、船荷の数や量にかかわらず一定のコストが発生するという、
運航そのものに伴う作業がある。資金コスト、維持費、給与、保険料、
燃料は、船荷の有無に関係ない。したがって運航に伴うコストは有料
船荷率で決まる。一回の運航のコストは以上のコストを中心として計算
される。
これらの分析によってすでに重要な結果が得られる。
新しい事実が明らかになり、長い間悩まされていた問題が明るみに出る。
そして新しく厄介な問題が出てくる。特に業績をもたらす領域として、
市場や流通チャネルについて同様の分析を行うとき、新しく厄介や問題が
明らかにされてくることが多い。
こうして、製品分析には少なくとも二つの種類の意思決定が必要となる。
それは製品を定義することであり、コストの基準としての作業の種類を
決定することである。
こうして、製品分析には少なくとも二つの種類の意思決定が必要となる。
それは製品を定義することであり、コストの基準としての作業の種類を
決定することである。
しかし、われわれは市場におけるリーダーシップという企業の外部に
おける評価、および製品の将来性という未来における評価について分析
しなければ、製品について知ったことにはならない。
この続きは、次回に。