P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊳
次は流通チャネルの間違いの例である。
ある住宅用器具メーカーは訪問販売の成果を喜んだ。訪問回数当たりの
購入者の割合が高く、売上げも他社の三倍だった。
しかし、分析してみると訪問販売は赤字であることがわかった。
訪問回数当たりの売上げは大きかったが、訪問回数そのものが少なかった
ためである。営業担当者は、数分ではなく数時間をかけて、製品の実演を
したり、住宅修理や管理の相談に乗ったりしていた。
そこで、同社は訪問時間の短縮を命じた。結果は、売上げ減だった。
必要な手直しは、訪問一回当たりの売上げを大幅に上げられるよう、
いろいろな製品をもたらせることだった。同社はそのような製品、しかも
かなり高価格の製品を数多くもっていた。しかし、それまでの訪問販売では、
製品の種類を限って、しかも低価格の製品しかもたせていなかった。
そこで営業担当者に小型トラックを用意し、全製品をもたせたところ、
数か月後には売上げが数倍となった。
しかし注意しなければならない。問題を抱えている製品の全てが手直し用
製品ではない。そのような製品はきわめて少ない。手直し用製品となるには
前述の条件に合っていなければならない。それらの条件のうち一つでも
満たさなければ、手直し用製品ではないとしなければならない。
さもなければ、昨日の主力製品や後述する非生産的特殊製品や、マネジ
メントの独善的製品が、手直し用製品であると主張されるようになる。
いかなる状況のもとであろうと、手直しは一度限りとしなければならない。
最初の手直しがうまくいかなかったとき、「どこが悪いか今度はわかった」と
訴えてきても無情に却下しなければならない。
そもそも手直し用製品は間違いの製品である。しかし、さらに悪い類型の
製品として、マネジメントによる独善的製品なるものが存在する。
そして、手直し用製品に二度のチャンスを与えることこそ、この独善的
製品を生み出すもとになる。
この続きは、次回に。