お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-30

第8章❖これがわが社の事業である

 

□ 診断の再点検

 

これまでに大要を明らかにしてきた四つの分析から、企業のマネジメントは、

その経済的な機能の遂行に必要とされる自らの事業に対する理解を得る

ことができる。しかし、それらの四つの分析は、いずれも、一つだけでは

役に立たない。

 

(1) 業績をもたらす領域についての分析(第2章)、利益と資源についての

     分析(第3章)

(2) コストセンターとコスト構造についての分析(第5章)

(3) マーケティング分析(第6章)

(4) 知識分析(第7章)

 

これら四つの分析を総合して使うことによって初めて、企業のマネジ

メントは、自社について理解し、診断し、方向づけを行うことができる

ようになる。

しかしもう一つ重要な段階である。それは、(1)と(2)の分析によって事業

そのものについて行った暫定的な診断を、(3)と(4)の分析によって再点検

していくことである。その結果、時として、せっかくの企業診断を大幅に

変更する必要が出てくる。確かに事実は正確に把握した。

しかし、まだ本当に理解するところまでは把握していないという場合で

ある。

例えばある製品は、その属すべき製品類型(第4章)を変えることが必要と

なる。非生産的特殊製品が、別の市場、別の流通チャネルでは、きわめて

有望な製品であることがわかるかもしれない。

逆に、暫定的な診断においては、堂々たる今日の主力製品、あるいは明日の

主力製品と判断したものが、実はすでにそのライフサイクルの末期、

あるいは末期近くにあることがわかるかもしれない。

これらのことは、製品だけでなく、市場や流通チャネル、そして時には

事業全体についてもいえる。

 

ある大手アルミメーカーは、アルミホイルの市場が飽和状態にあり、

少ない売上げも精一杯のものと評価していた。このメーカーは、アルミ

ホイルをほかの製品と同じように、生産財として扱い、設計技師や工業用

資材のための流通チャネルに販売していた。しかし再度のマーケティング

分析の結果、同社のマネジメントは、渋々ながらもこの事業が小売業、

特にスーパーを顧客としうる事業であることを認めざるをえなくなった。

そこで、この事業をほかの事業から切り離し、アルミについては何も

知らないが消費財のマーケティングに詳しい者に任せた。

数年後、この事業は当初の見込みを大きく超える売上げを達成した。

アルミホイルについてはかなり遅れた新規参入者だったこのメーカーが、

今日では全国市場で一位に迫っている。

 

この続きは、次回に。

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