お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-56

○ アンバランスを強みに転換する

 

事業において、完全なバランスは組織図にしかない。

生きた事業は、あちらで成長し、こちらで縮小し、あちらでやりすぎ、

こちらでやらなすぎるというように常にアンバランスな状態にある。

しかし、それ以前の問題として、あまりに多くの企業が慢性的なアン

バランスの状態にある。そこに資源を使わされている。

ある企業は、売上げ一五○○万ドルという中小企業でありながら、全国的な

営業スタッフや販促活動、流通を必要とする。

ある企業は、きわめて限定された範囲の特殊製品のメーカーでありながら、

GEと対抗するために固定物理学の研究所の維持を必要とする。

この種のアンバランスは弱みとして深刻である。企業の存立を脅かす。

コスト構造は最大の資源によって規定される。

補助的コストは成果の大小ではなく補助される活動の大小によって規定

される。

 

例えば、固体物理学に研究費を投じている企業は、最先端のGE並みの

施設、建物、設備、資料室を必要とする。さもなければ優秀な人材を引き

抜かれる。また、売上げ一五○○万ドルであっても、全国的な営業陣を

備えるともなれば、売上げ一億五○○○万ドルの事業と同じ規模の経理、

受注、監督、訓練が必要となる。

言い換えるならば、総コストは最大のもののコストと比例する。

しかし業績は、売上げと比例する。活動間のアンバランスの原因が、

補助的活動、監視的活動、浪費的活動にあるならば、その改善策は、

それらの活動を見直すことで良い。

補助的コストや監視的コストについては、最小の原則を適用し、浪費的

コストに対しては全廃の原則を適用すれば良い(第5章参照)。

しかしアンバランスの原因が生産的活動に起因しているならば、そこには

きわめてしばしば大きな機会が存在する。もちろん、そのような機会の

利用には事業そのものの性格や構造に大きな変化が必要となる。

 

この続きは、次回に。

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