お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-82

○ 事業の定義

 

あらゆる企業が自らの事業についての定義、すなわち事業とその能力についての

定義をもたなければならない。そしてあらゆる事業が代価の支払を期待できる

貢献を描かなければならない。「それはわが社の事業ではない」「それはわが社の

仕事の仕方ではない」というごく簡単なことでもよい。

あるいは諸々の目標についての膨大な説明でもよい。

しかし、いずれにせよ、意思決定を行う人たちが、いかに事業を見、いかなる

行動をとり、あるいはいかなる行動を不相応と見るかを規定する定義という

ものがなければならない。

事業の定義が市場に供給すべき満足やリーダーシップを保持すべき領域を規定

する。

 

「顧客の事務管理部門に対し、近代的なオフィスに必要な機器や消耗品を供給

する」という簡単なものであっても、事業の定義としては十分である。

市場を明らかにし市場に貢献すべきものを明らかにしている。

顧客の事務管理部門のニーズや製品、供給源や性能についての知識をもち、

顧客が自力で入手するよりも価値あるものを、代わって購入するという真の

商人の機能が、自らの事業であることを明らかにしている。

さらに、この定義は、市場においてリーダーシップを握ること、すなわち、

今日優れた満足を供給し、明日のオフィスのニーズを予見し、顧客の事務管理

部門にとっての価値を供給することを表明している。

しかもこの定義は、具体的な方法については何もいっていない。

実はいうべきではない。具体的な方法は、顧客が購入する製品のほとんどを

自ら生産することであるかもしれない。あるいはあくまでも流通業者として、

顧客に販売するものはすべて外部から買い付けることであるかもしれない。

あるいはまた、購買の代行機関として手数料をもらって顧客のために購入する

ことであるかもしれない。

この定義は具体的にいかなる製品を扱うかについても規定していない。

実は規定すべきではない。なぜならば、それは、時、場所、状況に応じて決定

すべきことであり、オフィスそのもの、およびオフィスに関わる技術や労働力、

あるいは顧客の購買担当者によって変わっていくべきものだからである。

「わが社の事業は、高エネルギー物理の生産工程への適用である」も定義と

して有効である。ここでは重点は知識に置いている。

「住まいに誇りをもち手入れをする住宅所有者に奉仕することである」もまた、

住宅雑誌社の定義としては完全に有効である。

いくつか有名な大企業の例を見てみる。

 

この続きは、次回に。

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